研究者に憧れた私が、ケンブリッジ大学の博士課程で学んだ理由

Road to Oxbridge オックスブリッジにあこがれて~博士編~
オックスブリッジ卒業生100人委員会

その学会のディナー中に、「先生の研究室で博士過程をやりたいです!」とプロポーズし、ケンブリッジ大学に願書を出した。先生曰く、学会のディスカッションのときに私が質問した時の印象が良かったため、博士課程の学生として受け入れることを了承したらしい。その後、TOEFLのスコアに苦労したが、PhDコース開始の2週間ほど前に、やっとケンブリッジ大学から合格通知をもらった。とにかく修士修了後にゆっくりする暇もなく、学生ビザを在日英国大使館で取得し、ケンブリッジに飛び立った。

ケンブリッジ大学での博士過程

人生二度目のケンブリッジ。そして今回は訪問者としてではなく、博士課程の学生として、正確には、博士課程の候補生として、その地に降り立った。ケンブリッジ大学PhDコースの博士過程一年目は候補期間であり、正式な博士課程は一年目の最後にある "First Year Report" を提出後、口頭試問を通って初めて始まる。その後は、博士論文を書き上げるまで実験漬けの毎日である。

ちなみに、日本では、PhD取得の条件として、少なくとも数本の論文の発表が課せられる場合が多いようだが、ケンブリッジ大学では、PhD取得にあたって論文を発表する必要はない。研究スタイルはそれぞれの研究室によって異なるのでケンブリッジはこうだという一般的な言い方はできない。しかしながら大半の人は8時~9時頃に実験を始め、17~18時頃に帰宅する。もちろん個人差もあるし研究内容にもよるが、よく実験する人間ほど成果を残しているのも事実である。日本人は働き過ぎであるというのは事実であるが、イギリス人がそこまで働かないのかと言われればそれも間違いである。例えばBlundell先生はすでに70歳を越えているが、朝の4時から夜の23時、24時ごろまで、自宅、研究室、旅先にかかわらず、常に仕事をする超人である。私にはそんなことはできず、7~8時間の睡眠を確保した上で、10~12時間ほど実験などを行っていた。

博士論文提出まで研究以外何もしないのかと言えばそうでもない。友達と研究に関係ないこともたくさんする。大学院生といえどもよく遊ぶのだ。ケンブリッジは学生の街ということもあり、学割のあるバーが多くある。よく学割が適用される日に、クラブやバーで深夜まで友達と飲みながら踊ったものである。飲んで踊ることはケンブリッジの大学院生にとっても当たり前のことである。イギリスでクラブに行くことは、日本でカラオケにいったりすることと大差はない。それが研究にどう繋がるかと言われれば、あまり関係ないだろうが、そこではめを外してこそ、あらゆる人間との繋がりが深くなる。学会の最終日には、それまでまじめに発表していた教授陣がダンスフロアで踊りだす。それが文化なのである。

カレッジメンバーと行った、ハロウィンパーティー

カレッジで広がる見識と交流

カレッジは、博士課程の学生にとっても重要である。私はHomerton Collegeに所属し、大学院生向けの寮に3年間住んだ。カレッジでは食事も提供されるが、午後7時半までと早く、食事も私の口に合わなかったので基本的に自炊した。同じ寮に所属する大半の学生が自炊をしていたため、学生同士の会話は日常茶飯事で、キッチンで夜遅くまで友達と語り明かしたこともある。

Harrison Houseで様々な専攻の学生と生活を共にすることは総括すると楽しかった。おそらく30ヵ国以上の学生と交流したであろう。会話の内容は他愛もない話から、文化や宗教の違い、自分の研究についてまで、多岐にわたる。小学校から高校まで、歴史、地理、社会といった教科が苦痛でたまらなかった私だが、友達から聞く全ての話が新鮮でおもしろかった。