『大栗先生の超弦理論入門』第30回講談社科学出版賞を受賞!

大栗氏が「100点満点」と言い切った
ブルーバックス編集部 プロフィール

――前の二作と違ってブルーバックスという科学ファン向けのシリーズに書くにあたり、意識の違いなどはありましたか。

大栗博司
(おおぐり・ひろし)
1962年生まれ。京都大学理学部卒業。京都大学大学院修士課程修了。東京大学理学博士。現在、カリフォルニア工科大学カブリ冠教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員。

大栗 ブルーバックスだからといって読者の予備知識を期待して、難易度を上げるようなことはしてはいけないと思っていました。ただ、科学的な好奇心が高い読者でしょうから、丁寧に説明していけば、ある程度は高度な話になってもついてきてくれるのではないかという期待はもって書きました。

私は子どもの頃からブルーバックスを愛読していて、いつかは自分も書きたいと憧れていました。しかも昨年は創刊五十周年、私もほぼ同い年ですから、ともに人生を歩んできたわけです(笑)。そうした思い入れのあるシリーズの節目の年に自分の本を出版できたことも、非常にうれしく思いました。

――いま、この本の出来栄えを100点満点で自己採点するとしたら、何点になりますか

大栗 100点です。

――ほーっ。

大栗 このたび賞をいただくことになったので、出版してから一年ぶりに、あらためて読み直してみたのです。すると、こんな話も入れたかったとか、説明のしかたを変えたほうがよかったと思ったところはひとつもありませんでした。すべてこう書くしかなかった。後悔はありません。だから減点法で採点するとマイナス点はゼロなので、100点です。

――これからのご研究のテーマはどのようなものなのでしょうか。

大栗 超弦理論はさまざまな物理現象を矛盾なく説明できる唯一の理論です。しかし、まだ仮説の段階であり、実験的に検証されたわけではありません。そこで、検証可能な予言を超弦理論によって導き出すということが最大のテーマです。そのためには、相対性理論と量子力学との間にある、ある種の緊張関係を解きほぐすことが重要になってきます。

――もう少し、かみくだいていただくことはできますか。

大栗 重力についての理論である相対性理論は、簡単にいえば現象が場所ごとに独立して起きる、局所的な理論です。これに対して量子力学は、離れているものの間にも相関関係がありうるという非局所的な理論です。最近、東芝が理論上破られない究極の暗号とされる量子暗号通信の実用化にめどをつけたというニュースがありましたが、これも量子力学の非局所性を応用したもので、離れていても相関関係があるから暗号が送れるのです。

超弦理論は「ひも」という局所的でないものを基本とすることで、相対性理論の局所性と量子力学の非局所性という相反する性質に折り合いをつけます。初期宇宙の観測が進めば、相対性理論と量子力学の統合を起源とする現象が見つかり、超弦理論の検証につながると期待しています。

超弦理論が実験的に検証され、自然界の究極の理論として確立されたあかつきには、もう一度これを社会に「プロフェス」する科学解説書を書きたいと思っています。

講談社 読書人の雑誌「本」2014年10月号より