「会社の破綻は人生の通過点に過ぎない」・・・山一証券倒産時に最後まで残った12人を描いたノンフィクション『しんがり』が講談社ノンフィクション賞を受賞!

著者:清武英利
(きよたけ・ひでとし)
1950年宮崎県生まれ。著書に『巨魁』『「同期の桜」は唄わせない』(ともにワック)など。現在は週刊現代で「国税庁の事件ファイル」、FACTAで「実録 ソニー『追い出し部屋』」を連載中。

――「会社や上司に流されず、信念を貫く」・・・・・・ひょっとして清武さん、彼らの境遇に自分の身を重ね合わせようとしたのでは? 

清武 いやいや、そんなことはありませんよ、ははは(笑)。

――実際の取材はどのような感じで進んだんでしょうか。

清武 たとえば、実質的な主人公として描いた嘉本さんには、短い時も含めれば、全部で十回近く会って話を聞いています。朝、最寄り駅で待ち合わせて、嘉本さんの車で彼の自宅に向かいます。十時半ぐらいに到着し、そこからひたすら話を伺います。お昼をご馳走になって、時にはビールもいただいて、午後三時ぐらいまでずっとインタビュー取材を続ける------そんな感じでした。

これは他に取材した山一関係者の方々にもあてはまりますが、とにかく、事実を掘り起こそうと、破綻当時に交わされた会話の一つ一つまで徹底的に思い出してもらったりもしました。本書に載せた物語は登場人物の言動はもちろん、彼らの心理描写にいたるまで、事実に近い近似値であるという自負はあります。

――まあ、その気迫に満ちあふれた文章は、ぜひぜひ本書をお読みいただくとして(笑)、嘉本さんの取材で何か特に印象に残っていることはありますか?

清武 今回、私が本の中で描いた十二人、「しんがり」を務めた方々の話をしていて、嘉本さんに「この十二人はみんな幸せだったんでしょうかねえ」と聞いたことがありました。嘉本さんは次のように答えました。

「人間に『幸せですか?』と聞いて、素直に『不幸せです』と答える人間はなかなかいません。人間の人生は幸せ・不幸せという尺度では測れないのではないでしょうか。幸福や不幸ではなく、満足か不満足かで聞いたほうがいいんじゃないですか。その意味では私は私の人生にとても満足しています」と。

ああ、なかなかいい言葉だなぁと思った記憶があります。私もここまで自分が選んだ道に悔いはないので、なんだかホッとしたというか。自分が辛かった時に嘉本さんの話を聞きながら、「よし、俺も頑張ろう」と、よく自分を励ましたりしていましたよ。

――やっぱり、彼らに自分の姿を重ね合わせているのでは・・・・・・?

清武 しまった。うっかり本音を吐露してしまった(笑)。

読書人「本」2014年10月号より