宮嶋 実は昔、週刊プレイボーイで連載されていた今東光さんの人生相談「極道辻説法」を愛読していて、人生の指針をたくさんいただきました。いまでも覚えているのは、三畳一間に住んでいる童貞の貧乏学生がひとしきり面倒な悩みを打ち明けて「どうしたら彼女ができるでしょう?」と訊くわけです。そしたら和尚がひと言、「4畳半に引っ越せ」と。あれは笑いました。
島地さんは他にも、作家の方たちとお付き合いがあったと思いますが、やはりいろいろ影響されているんでしょうか。
島地 今東光さんは最もお世話になった一人ですね。他にも、シバレンさん(柴田錬三郎)、開高(健)さん、吉行(淳之介)さん、影響を受けた人をあげればキリがない。男として憧れる存在がいてはじめて、男は自分を磨こうと思うものでしょう。煙草の銘柄も、吸い方も、先輩たちからいろいろ教えられました。宮嶋さんはいつから葉巻を?
宮嶋 ぼくの場合、現場で張り込んでいる間はひたすら待ち時間ですから、ひっきりなしに煙草に火をつけていたんですね。でも葉巻にすれば1本でかなり長持ちします。そこからです。
島地 やめようとしなかったのはエラいね。
宮嶋 煙草は男の文化の一つで、煙草があるからこそ、多くの作家はすぐれた作品を世に送り出せたんじゃないでしょうか。
島地 ニコチンは脳を覚醒させますからね。それに、認知症の抑制に効果があるとされています。実際、アメリカでは、軽い認知症患者にはニコチンパッチを貼ることもあるそうです。
宮嶋 そうなんですか。じゃあカメラマンを続けるためにも必要なものと考えていいんですね。
島地 もちろんです。大いに吹かして、これからも世の中をアッと驚かせるような写真を撮ってください。
〈了〉
著者: 島地勝彦
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