「Road To Oxbridgeオックスブリッジに憧れて」シリーズでは、全4回(学士・修士・MBA・博士)に渡り、オックスブリッジを目指したキッカケから実際の入学後の話を、一人の実体験をもとに探求していきます。第3回目である今回は、MBA編をお届けします。
8月末、私は、インドネシアで行われた国際会議を無事に乗り切った達成感とともに、成田空港に降り立った。人生2度目の小さな国際会議だが、前回とは比較にならないほど堂々と振る舞うことができたと自負していたからだ。国際協調のもとで金融犯罪と戦うべく、韓国、中国、オーストラリア、その他アジア諸国、欧州代表、国連代表などが集う中で、「Japan Delegation(日本政府代表)」のネームタグを提げて会議に臨み、臆せず発言し、世界中に同僚を作ることができた。
この成果をもたらしたのは、ほかでもない、その2ヵ月前まで過ごしたケンブリッジでのトレーニングであったと思っている。今回は、私が、修士課程(MBA)の一学生としてオックスブリッジに何を期待したのかを語ってみたい。社会人で留学を考えている方に少しでも参考になれば幸いである。
私は、修士課程の学生であると同時に、一度就職した上でイギリスに留学している社会人でもあった。社会人にとって留学は貴重な機会なので、大学院の勉強以外にも、私は、できる限り英国の文化を深く理解したいと思っていた。また、かねがね、イギリスは国自体が不思議な魅力を持っており、日本人にとっても学ぶべき点が多いように感じていた。というのも、イギリスは、日本と似たような地理的境遇や政治制度を持ち、日本が経験してきた歴史と重なる面があるにも関わらず、国際社会での影響力では日本をはるかに凌ぐものを持っているように思われたからだ。
よく知られているように、イギリスは、世界に先駆けて議会を発達させ、世界の先陣を切って産業革命を成し遂げた。このあたりは、モノ作りを売りにしてきた日本と近いものを感じる。しかし、イギリスは、昔から地球を俯瞰する外に向けた視点をもち、同じ島国でありながら大英帝国と言われる覇権国家を築き上げた。その後製造業はドイツや日本にとって代わられ、両世界大戦を機に世界の覇権国家の地位はアメリカの手に渡った。それでいながら、今なお国際政治では強い影響力を保ち続けるこの国に、魅力と興味を感じたのだ。
そんな考えから、私は、英国の強みの源泉ともいえるものの秘密を垣間見たいと思った。そして、そのカギは、長年にわたりリーダーを輩出してきたオックスブリッジにあるのではないか。かつてケンブリッジの経済学者マーシャルが残した「冷静な頭脳と温かい心(cool heads but warm hearts)を併せ持ち、社会が抱える問題に取り組むため、その恵まれた能力を進んで発揮する、そんな卒業生を増やすことが私の願いである」という言葉を思い起こしながら、自分も、そんな英国流の教育とその底流にある哲学、イギリス文化の神髄にできるだけ触れてみたい、と思うようになった。