映画『テルマエ・ロマエ』では、阿部寛扮する古代ローマの浴場技工・士ルシウスが現代日本にタイムスリップし、日本人のことを「平たい顔族」と呼んだ。この平たい顔は、もともとの日本人ではなく、弥生人の特徴だと言われる。
弥生人は、よく知られるように、大陸系の移民であった。その後、大和朝廷の時代に入っても、日本では「渡来人(帰化人)」を積極的に受け入れ、大陸の文化や技術を大いに吸収した。その規模は、弥生時代初期(紀元前300年)から飛鳥時代末期(紀元後700年)で100万~300万人程度だったとされる。8世紀当時の日本の人口が約500万人だから、すごい数字だ。
そもそも建国期は移民によって成り立った日本は、その後の歴史においても、安土・桃山期の南蛮人、明治期の欧米人の受け入れ、戦前・戦中における朝鮮半島からの移住者など、本来、移民や外国の知恵を大いに受け入れ、発展してきた国家である。日本が(ほぼ)単一国家だというような発想や島国根性的内向き志向は、歴史的にはつい最近の出来事であるといえよう。
戦略的な移民の受け入れは、人口1億人を維持し、人口減少社会を食い止める切り札となり、ダイバシティ豊かな新たな活力を生み出し、新たな国家の形を作り上げることとなる。計画を立て、まずは富裕層やエリートなど、日本にとって必要で「役に立つ」移民を積極的に日本に誘致し、それを日本の成長につなげる。日本の衰退を回避するためにぜひとも進めるべき政策である。
それでは、「新渡来人計画」の具体化を進めよう。日本にとって「役に立つ」外国人を積極的に受け入れるのだ。そのために必要なのは、まず「計画」である。
現在、日本には、約200万人の在留外国人がいる。内訳は、在日中国人が65万人、在日韓国人が51万人、留学生が13万人などだ。
新渡来人計画では、年に20万人在留外国人を増やし、年間10万人に対して日本国籍を新たに取得する外国人を増やす計画としたい。国家として数値目標を明確に打ち出すことが重要だ。
つまり、現在いる在留外国人のうち毎年10万人に新たに日本人になってもらい、在留外国人を新たに年間に20万人増やすことが必要となる。これを20年間続けるのだ。それができると日本は活力がある社会を創ることができよう。
政府の試算によると、日本の働き手は今後35年間で約2400万人減少してしまう。これは、毎年70万人以上のペースで労働力が減少していく計算だ。
GDPは労働力と生産性の積だから、労働力が減少すれば経済は縮小せざるを得ない。このため、少子化への対応、出生率の向上のための政策は、日本の成長戦略としてきわめて重要である。だからこそ、100の行動39 厚生労働5「少子化対策のためにタブーに立ち向かえ~婚外子を認める社会に!」でも、そのための提言をおこなった。
しかし、出生率の向上だけでは間に合わない。国家として人口・労働力を増やす方策は、ほかに2つある。1つは、「国内の潜在労働力の掘り起こし」、そしてもう1つが、「移民」という選択肢だ(国内の潜在能力の掘り起こしに関しては、この行動の5にて詳述する)。
実は、日本は1980年代後半、外国人労働者の受け入れに比較的寛容であった。バブル崩壊前の成長期に、建設現場や飲食店で働く労働力を補うため、なし崩し的に外国人労働力を受け入れていった。
しかし、これは政策の失敗だったと言える。なんら戦略も計画もなく、単純労働に従事する外国人の受け入れを拡大したため、バブル崩壊で単純労働に従事していた外国人の多くが日本を去った。また、居残った不法滞在者などによるトラブルで、「移民受け入れ=治安が悪化する」といった外国人に対する悪いイメージを拡げることにもなった。
失われた20年の間に日本社会は極めて内向き志向に陥ってしまっているが、安倍政権が成長を掲げるいまこそ、まじめに移民政策を論じる必要があろう。そのためには、戦略性を持った移民政策が必要だ。それは、一言で言えば、「日本に役立つ外国人をどんどん受け入れる」というものだ。太古の渡来人も、戦国時代の南蛮人も、明治期の御雇外国人も皆、当時の日本が欲する技術や知識を持った外国人を積極的に受け入れたものだ。いわば、これは「日本のお家芸」とも言えよう。
だから今こそ、日本の成長を牽引する「新渡来人計画」で戦略的かつ計画的な移民政策を進めるべきであろう。
景気が良いときだけ労働力不足を補うために外国人を受け入れ、景気が悪化すれば解雇し、面倒もみないのでは移民は定着しないし、移民に対する国民の理解も進まない。年間10万人国民が増えれば、20年間で200万人増える計算となる。目標を設定し、5年計画等で必要な政策や環境整備を進める必要がある。