篠崎史紀 第4回 「"鈴木鎮一スピリット"を受け継いだ父・篠崎永育の怪物的教育法」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ マロさんのお父上は本当の意味で怪物的な教育者ですね。ところで、マロさんはクラシック以外の音楽にも興味はあるんですか?

篠崎 もちろんありますよ。ジャズや民族音楽も大好きです。民族音楽はいろいろな作曲家に影響を与えているし、ジャズはクラシックの発展形といえます。クラシックは再生文化で、いつも決まったものを演奏していきますが、ジャズはそこからさらにアドリブをつけ加えていくところが面白い。ジャズフェスティバルでハンク・ジョーンズと演奏したこともありました。

立木 へえ。面白い話だね。それはいつごろだったの?

篠崎 当時はまだ30代だったでしょうか。そこでわかったことは、楽譜のある曲をやると彼の持ち味が出ない。でも楽譜のないものをやると彼は空を飛び回る鳥のようになるんです。クラシックにも同じような部分はあるんですよ。設計図通りには演奏するけど、奏者によってなにかしらちがいが生まれる。ただクラシックは奏者のファンタジーを表現するよりも、作曲家の伝道者であるべきなんですよ。

シマジ クラシックのオーケストラがジャズをやるとどんな風になるんでしょうか?

篠崎 面白い質問ですね。それはもう、四角四面の演奏になるんです。みんな譜面通りに演奏しますから。こんなにノリの悪いジャズもあるんだと、逆に滑稽なくらいですよ。ものごとの面白さというのは、完成されたものを崩すことにあるんだと思います。それが出来ないのがクラシックプレイヤーなんですね。

シマジ クラシックでもコンダクターによって崩す人はいるんじゃないですか?

篠崎 そうですね。いちばん崩しが上手い指揮者はヴァレリー・ゲルギエフですね。彼は完成品をフワッと崩すのがとても上手い。

シマジ それをコンマスとしてどう引っ張っていくかが問題なんでしょうね。

篠崎 そうですね。コンマスはいちばん先に彼の意図を汲んで団員を引っ張っていかないといけないんです。カラヤンはそのコントロールのされ方が天才的だったといわれています。彼は音楽のことはもちろんですが、超能力や催眠術や読唇術まで勉強していたらしいです。