[プロ野球]
佐野慈紀「新人王は誰の手に!?」

スポーツコミュニケーションズ

独立リーグ出身第1号の誕生も

 一方、セ・リーグはというと、24日現在2ケタまであと1勝と迫っている大瀬良大地(広島)と、中継ぎながら9勝(1敗)を挙げている又吉克樹(中日)の争いと言っていいでしょう。まず大瀬良ですが、いい時と悪い時との差があり、波が激しいという印象があります。春は5連勝するなど、下馬評を上回る活躍でチームに大きく貢献しました。しかし、6月以降は疲労が出てきたのでしょう、6月7日の福岡ソフトバンク戦では初回で8安打10失点と大崩れするなど、序盤で失点することも多くなり、黒星が増えました。

 それでも開幕からしっかりと先発ローテーションを守ってきたことは評価できます。特に1-0とプロ初完封をした今月6日の横浜DeNA戦では、彼の武器である低めにコントロールされた球威あるボールを最後まで見せてくれました。チームも現在リーグ2位ですから、あとは2ケタにさえ届けば、セ・リーグの新人王はほぼ決定ではないでしょうか。

 その大瀬良にとってライバルとなっているのが、又吉です。彼は大学卒業後、四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズに入団し、エースとして活躍しました。私は独立リーグ時代の又吉を実際に見たことはなかったのですが、「勢いのあるピッチャーがいる。ドラフトにかかることは間違いない」というウワサは耳にしていました。ですから、独立リーグ最高位の2位で指名されたことには、それほど驚きはありませんでした。

 とはいえ、正直言って、1年目からここまでの活躍をするとは思いませんでした。私の予想では、もう少し変化球の腕の振りが落ちるだろうと思っていたのです。しかし、又吉はしっかりと振れています。しかも、腕が遅れてくるために、スライダーがチェンジアップのように遅れてくるため、少々甘いところにいってもバッターは振ってくれるのです。これはサイドスローピッチャーの特徴でもあります。もし、又吉が新人王を獲得すれば、独立リーグ出身者としては初の快挙。独立リーグに携わっているひとりとして、非常に楽しみです。

 大瀬良、又吉にはかなわないものの、新人王候補者のひとりとして個人的に期待していたのが、24日の広島戦でプロ初勝利を挙げたルーキー杉浦稔大(東京ヤクルト)です。春のキャンプで彼を見た時に「いいピッチャーが入ってきたな」と思いました。腕の振りが柔らかく、しなっていて、将来的には岸孝之(西武)や伊藤智仁(元ヤクルト)のようなピッチャーになるかもしれないという期待を抱いたのです。

 しかし、黒星がついた2試合では、杉浦の良さが出ていませんでした。コントロールを気にし過ぎて、思い切り投げていないように感じられたのです。あの腕のしなりから繰り出される真っ直ぐに、バッターはさしこまれるはずなのに、「まずはファーストストライクを取って」という攻め方で、積極性に欠けていたのです。

 いずれにせよ、彼ら全員に求めたいのは、変に大人の投球をするのではなく、若手らしく、思い切ったピッチングを見せてほしいということ。残り試合は少なくなりましたが、最後に新人王争いを盛り上げるような活躍を期待しています。

佐野慈紀(さの しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商-近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日-エルマイラ・パイオニアーズ(米独 立)-ロサンジェルス・ドジャース-メキシコシティ(メキシカンリーグ)-エルマイラ・パイオニアーズ-オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6 球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。