[裏方NAVI]
田村尚之(トレーナー)<後編>「平井門下生の活躍にトレーニングあり」

スポーツコミュニケーションズ

新たな試みによる新たな発見

 平井という指導者は決して現状で満足することはない。より高みを目指し、さらに新しいことにチャレンジする。北島のアテネに続いて、北京での2大会連続2冠達成という偉業は、指導者である平井の人一倍強い探求心なしに語ることはできないだろう。

 実際、アテネで2冠達成後、北島のトレーニングは変化している。アテネまでは全体的な筋力を強化し、ベースアップを図ることがテーマだった。そのため、ベースの筋肉をつけることを優先に考え、その分、オーバーワークにならないように水中練習を多少抑えていたところがあった。しかし、北京に向けては技術的なレベルアップも必須だった。鍛えた筋力を、いかに泳ぎに結び付けるかが課題だったのだ。そのためには水中練習の割合を増やすことが必要だった。とはいえ、トレーニングが重要であることに変わりはない。

 そこで田村と平井は話し合い、トレーニングの回数を、それまでの週2回から3回に増やすかわりに、1回1回のボリュームを落とし、翌日の水中練習に影響を及ぼさないようにした。そうすれば、水中練習の回数も増やすことができる。さらに水中練習の前に行なわれる陸上トレーニング(ドライランド)のボリュームを増やし、腕立て伏せや腹筋だけではなく、ダッシュ系やジャンプ系のトレーニングを入れた。トレーニングルームで削られたものをドライランドで補ったのだ。

「ダッシュ系やジャンプ系のトレーニングをプールサイドでのドライランドで行なうことでメリットもあったんです。トレーニングをすると、神経が活性化されて筋肉と神経の連携が促進されます。つまり、神経からの信号がダイレクトに筋肉に伝わる状態になるんです。その状態で水中練習に入るので、身体がとてもいい状態で泳ぐことができる。実際にやってみたら、そういう効果もあったんです」
 平井の探求心が、またひとつ、日本競泳界に新たな発見を呼び起こし、北島らメダリストたちの礎となったのである。