「専門分野の高いリテラシーと素人の常識をもっていることが重要」---ジャーナリストの価値とこれからの課題とは?

佐藤 慶一 プロフィール

「海外メディアは分業が効いている」

それを受け、佐々木氏は「フィナンシャル・タイムズは600〜700名くらいの体制で世界中をカバーして、クオリティメディアとしての地位を築いている。そういう意味では日本の新聞社の記者は生産性は低いのではないか」と質問した。

大西氏は「海外メディアはストロングポイントを絞っているのに対し、日本のメディアはとにかくカバレッジ重視で、分業が遅れている」と語る。日本では地域の販売・営業戦略とニュースカバレッジが一体になっていることが重たいのだという。

ソーブル氏はフィナンシャル・タイムズの立ち位置を述べた。「イギリスのマーケットが小さいため、外(世界)でやっていこうとしている。もちろんニュースはしっかりしていなくてはならないが、分析やオピニオンのほうが重要なので、(通信社や日本の新聞とは)勝負しているところが違う」。

1998年から欧州総局(ロンドン)駐在していた大西氏は「ワールドワイドで見たときには分業が効いている」と、当時見た経験を振り返った。ロイターやAPなどの通信社がストレートニュースを全部カバーし、フィナンシャル・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルは通信社の一次情報をもとに解説などをおこなう状況と対照的に、「日本は基本的に両方やろうとしている」ので分業が遅れているというわけだ。

また、少ない通信社によって世界の一次情報がカバーされている状況は「危険」な側面もあると大西氏。「みんなが考えるほう(解説や分析)に行ってしまうと、大丈夫なのかなと思う。一次情報をマネタイズするのは難しくなっている現状もあり、割に合わない。だからといって、前線(ストレートニュース)から退いてしまうとメディアは成り立たない」。ストレートニュースがあるからこそ、解説や分析・オピニオンの存在価値が生まれるので、これはジャーナリズムの課題のひとつなのだろう。

今後3年で100名の編集部体制を目指す佐々木氏は「日本の経済ニュースの一次情報をちゃんとカバーするのに何名くらいの記者が必要なのか」という質問を投げかけた。

これについて大西氏は「上場企業に限るのかなどターゲットにもよる。たとえば、競合の『日刊工業新聞』は全国に記者を配置し、町工場のレベルまで回っているが、それは真似できない。それも経済なので、ロングデールで考えると果てしないが、1000人は必要。上場企業のみのカバーだと30人くらい」と返答した。