安西洋之(以下、安西) 糸井さんは「グローバリゼーション」という言葉が似合いませんよね(笑)。
糸井重里(以下、糸井) その意識、ないですね(笑)。
安西 そこが糸井さんの強さだと思います。
糸井 そりゃ、外国のめずらしい人たちと会えるのはうれしいですよ。特に篠田さんが来てからは、僕の話すことを、僕の意図を組んで補足までして通訳してくれるので、助かります。そうして話すと、向こうも「その考え、おもしろいかも」と言ってくれて、さらに話がはずむ。それは楽しいですよね。
安西 私も著書の中で紹介しているHubspotという会社を訪問したときの連載に、動画が公開されていますよね。それを見て、糸井さんは篠田さんを介してこういうふうにコミュニケーションしているのか、とわかっておもしろかったです。
糸井 来日するすごい人は、「日本の普通のお客さんに会いたい」という意図があるんですね。そういう場合は、ほぼ日に来るのがいいと思うんです。僕らは、普通の人だから。そうしてここは、グローバリズムなんてわざわざ言わなくても、メジャーリーガー級の人が次々と来てくれるおもしろい場所になりました。
安西 糸井事務所は、日本の普通の人代表、なんですね。
糸井 『ワーク・シフト』『未来企業』という本を書かれた、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットンさん(※対談記事はこちらから)も、「私たち、双子なんじゃないかしら!」と盛り上がってくれましたねえ。全く違うところで生まれて、違う育ちをしているのに、同じ考えにたどり着く。こういうとき、その考えはどこから仕入れたんだろう?って不思議に思います(笑)。
安西 双子(笑)。それはすごく意気投合したんですね。
糸井 安西さんのお書きになっていることもそうなんですけど、どう考えても筋道は違うのに、一緒のところにたどりつくということに、すごく興味があるんです。
安西 それはほとんどの人が、共通する要素を60や70%は持っている、ということなんじゃないでしょうか。
糸井 本当はそうなんでしょうね。僕はよく、「奈良時代の人にもわかるようなことを言ってるんだ」と言うのですが、その共通の部分を頼りにしていれば、たぶん合うんです。あとは、捨てることのできる人は、話ができるなと思います。
安西 捨てることのできる人ですか。
糸井 積み重ねて、鎧をまとって自分を偉く見せてきた人とは、合わないですよね。蓄積を誇る人との対話は、やっぱりつらいです。