安西洋之(以下、安西) 糸井さん、「今日のダーリン」※1で、今日(取材日)は「売り子」の話を書かれていましたね。売り子というのは、全人間力が試されるような仕事だと。
※1 ほぼ日刊イトイ新聞のトップページにある、糸井重里さんが1999年6月6日の創刊以来毎日更新しているコラム。バックナンバーは残っておらず、アーカイ ブも設けられてはいない。「毎日、更新されて、毎日、消えていくコンテンツ」として『ほぼ日刊イトイ新聞』に掲載されている。
糸井重里(以下、糸井) 今日は安西さんとお会いするので、安西さんの本を意識して書いたんです。
安西 そうだったんですか! すごく興味深かったです。ちょっと斜め方向からの質問になるんですが、美女はいい売り子になると思いますか?
糸井 そうですねえ。美人だからこそ、うまくいく要素は当然あると思いますよ。でもそれは同時にじゃまになる要素でもある。美人だから敬遠される、ってこともありますからね。いい売り子になるかどうかと美人は関係ないんじゃないかな、と思います。
安西 糸井さんって、女の人が美人かどうか意識したりしないんですか?
糸井 しないですね。僕は、「美人」を仕事にできるほどの美女がいたとしたら、それってある種の異常だと思ってるんですよ。つまり、「落ちこぼれ」があるように、数値が上にオーバーしてる「吹きこぼれ」っていう状態もあるんです。その状態ってちょっとかわいそうですよね。でも、美人かどうかは別として、僕は女性っていいなあ、と思っていますよ。
安西 そういえば、糸井重里事務所のCFOは女性ですね。
糸井 もともと6年前くらいに僕が、うちの会社にはCFOが必要だと思いはじめて、その役職についてくれる人を探したんです。でも、紹介された人と会うと「財務はあなたの不得意な分野だけど、僕はわかってますよ」とアピールするような人ばかりで、どうも違うなと思っていました。そうしたらある日、「そうだ!女の人だ!」と天啓のようにひらめいたんです(笑)。
安西 それで、女性に限ってCFOを探した(笑)。
糸井 そう。で、篠田さんを紹介してもらったら、もう「この人だ!」と。性別でいいわるいを分けるわけじゃないんですが、男同士だと向こうが「なめるなよ」と力を誇示しているように感じて、僕も財務のことはよくわからないから「ははあ」とひれ伏しちゃうんです。女性が相手の方が、僕も本当のことを言える。というか、僕はやっぱり根本的に女性が好きなんです。こういうと誤解を受けそうなんですけど(笑)。
安西 と言いますと……?(笑)
糸井 若いときにこれを言うと「えっ」って言われたんですけど、年をとると「ほんとかも」と思われるようになってきましたね。いや、わかってもらいたいんだよなあ、この感じ(笑)。女性に対して全体的に好感を持っているんですよね。それは、道を歩いている時にも思います。