世界の伸びている中小・ベンチャー企業に学ぶ、これからの時代を生き抜く8つのヒント

安西 洋之

(3)世の中に流布している声に押しつぶされない

「コーポレイトガバナンス」や「コンプライアンス」という言葉が中小・ベンチャー企業にとって時に圧力になる。それらを否定せよというわけではないが、EUにおける化学物質の規制で中小企業団体が例外規定を求めたように、グレーゾーンはどこにでもある。

グレーゾーンはその字義の通り、明示的ではなく受け手の解釈次第である。グレーはお行儀の悪い人たちの特権であるというのも先入観なのだ。グレーゾーンにこそイノベーションのネタが眠っている。

(4)情報や記号を読み取るトレーニングをする

社会のあらゆるところにある情報に敏感になることだ。同じ社会に住んでいて、大企業の一人が中小・ベンチャー企業の人間と比べものにならないくらい多くの情報を持っていることはない。あることについて多くデータを持っていても、その他のことについてはまったく知らないため、全体像が掴めずに宝の持ち腐れになっていることもある。

公的機関にある情報も(基本的に)平等に提供される。したがって社会の表に出ている情報や記号の読み取りができれば、現場の感覚を熟知する中小・ベンチャー企業はダントツの力を持てる。問題は前進する確信を持てるかどうかなのだ。

(5)異なる文化とつきあうことのコスト概算をとる

ビジネスとは偏見との闘いだ。異なる文化とビジネスをするにあたり、異なる文化と仕事をするとどの程度の追加コストがかかるのか概算できることが第一歩。それは社外で生じるコストだけでなく社内で同じ感覚を共有するためのコストも含む必要がある。ヨーロッパの企業はこの概算の訓練ができていることが多い。

はじめから大きなプロジェクトを狙わず、小さいプロジェクトでコスト計算の練習をすることだ。このためにソーシャルメディアで知り合った人と小さな仕事を一緒にやってみることも訓練になる。

(6)さほどお金をかけないでもビジョンは浸透できる

ビジョンをどれだけ噛み砕いて現場に浸透させるかが勝負である。高いお金を費やして研修するよりも、他社ではやっていないことに少々の予算を投じて十分なことがある。

マザーハウスのアート助成金はその良い例だ。またほぼ日の篠田氏が米国海兵隊の例を引用したように、マニュアルよりもドクトリンを徹底させることが機動力を発揮するのに効果的である。スピードが早い状況変化に対応できる企業文化と組織の構築が重要だが、その運用にあたり、マニュアルは優先されないことに注意を向けるべきだ。