教育・退職・介護という3つの課題を抱える「トリレンマ世代」---資産準備のために知っておくべきこと

『日本人の4割​が老後準備資金0円』第2章より

明るくない50代男性シングルズ

50代の男性シングルズを特徴づけているのが、退職後の生活は「明るくないぞ」という危機感です。

退職後の生活イメージを聞いてみると、既婚の男性と比べて50代男性シングルズは「いきいき・はつらつ」「のんびり・マイペース」「明るく・楽しい」の比率が低く、「ほそぼそ・質素」「つらく・不安」の比率が高いことがわかりました。

この危機感はどこから来るかというと、単に資金の問題だけではないように思われます。というのも、退職後の楽しみなこととして「趣味や習い事」を選んだ人が、50代男性シングルズの中では29.9%と最も高いのです。50代既婚男性では18.6%ですから10ポイント以上、50代女性シングルズの23.4%と比べても5ポイント以上高いのです。さらに、50代男性シングルズの28.7%が「旅行・レジャー」を選んでいるのですが、それよりも「趣味や習い事」は高い比率なのです。

少し心情を推し量れば、こうした回答も理解できそうです。男性にとっては、退職後は本当に一人になることがプレッシャーなのでしょう。仕事をしているうちは、一人で生活していてもなんとか会社の人間関係でつながっており、一日を暮らすことはできるかもしれません。しかし、退職して仕事の人間関係がなくなるとなったら、「趣味や習い事」で人とのつながりを求めざるを得ないのでしょう。

日本株頼みの50代男性シングルズ

50代男性シングルズは人間関係を持ち続けることが大切だと考えているのですが、趣味も習い事もお金が必要なものですし、老後を一人で過ごすとなれば「頼れるものはお金だけ」と考えてもおかしくありません。だからこそ、50代男性シングルズはお金に対して積極的です。

退職後の生活に年金以外に必要な金額は、平均で3,553万円と最も大きな金額を提示しています。また、現在準備できている退職後の資金も1,202万円と、50代男性シングルズは、年齢別、性別、既婚・シングルズの分類の中でトップの金額です。そのため老後の資産運用に関しても積極的です。

50代男性シングルズの38.0%が投資を行っていますが、50代の既婚男性も38.7%ですから、それほど特徴的ではありません。しかし、退職後資産の形成のために資産運用をしている人の比率は、50代男性シングルズで32.6%と、既婚の50代男性の24.2%とは大きな差が出ています。50代男性シングルズは、既婚者よりも老後の資金を心配し、その資金確保を資産運用で図らなければならないと考えている傾向が強いようです。

これはなにも50代だけではなく、30代、40代でも、シングルズは老後資金確保のために投資を行うという傾向がはっきり出ており、大きな特徴といえそうです。一人で迎える老後にはお金が大切、ということを実感しているようです。

ところで、こうしたシングルズの投資対象には、圧倒的に日本株が多いことも特徴です。40代男性シングルズで77.0%が、50代男性シングルズでは80.3%が日本株を投資対象として保有していました。50代男性シングルズでは、次に多かったのが日本株に投資する投資信託で、この2つが投資対象としては大きな特徴となっています。日経平均株価が上昇することは男性シングルズの将来設計には非常に大きな力になるということでしょうか。

50代女性シングルズの準備不足

一方で男性に比べて女性はたいへん厳しい状況です。50代女性シングルズの平均年収は372.8%万円で、50代男性シングルズの3分の2の水準にとどまっていることが厳しさの元凶のひとつでしょう。一人での老後を懸念して退職後の生活用として確保している資産の平均値は938万円と意外に多いのですが、71.5%の50代女性シングルズが、必要額2,912万円は準備できないとあきらめています。

中でも、特に大きな問題になりかねないと心配しているのは、現在170万人に達する50代女性シングルズの3分の2が、離婚・死別によってシングルズになっていることです。当初から結婚しないで生活を続けると決めていれば老後準備もそれなりにできるでしょうが、そうした準備もなく突然にシングルズになった場合には、十分な準備がないままに老後を迎えることになるのではないでしょうか。まるで断崖のような鋭角に状況が変わったシングルズ、いわば・断崖シングルズ・はかなり危険な気がします。

このアンケートは、働く女性を対象にしています。もともと結婚をしないで働き続けてきたという回答者は、その覚悟のもとに退職後の生活の準備を進めることができたのかもしれません。しかし、途中で離婚や死別でシングルズになった50代女性がそれをきっかけに働き始めたのであれば、けっして十分な老後の準備ができているとはいえないでしょう。

年金さえ十分だとは考えにくく、手元に老後のための資産がなければ、かなりたいへんな事態なのではないでしょうか。特に、先述のとおり年収は400万円未満の状況なのですから。