『吹奏楽の神様』屋比久勲氏が47年間子どもたちに
実践してきた怒らない教え方(3)

屋比久 勲

ただ、テストで「なんであの子が?」という反応はないけど、本番で「あれこの子がこんなに吹けたの?」という子がたまにいます。

他にも、部員からメンバー変更の注文が来ることもあります。
ある年の九州大会の3日前に「大太鼓がどうしても合わないので、違う人に変えてほしい」と他のパートの人に言われ、僕も気になっていたので、3年生から2年生のメンバーに変えたことがあります。

2年生のメンバーは「先輩をメンバーに戻してほしい」と言いましたが、僕が「戻して合わなかったら、そのほうがかわいそうだから」と言って納得させました。

テストでは、誰かが疑問を持つような決め方はしません。

例えば、僕やパートリーダーが「あの子はこの子よりも下手だけどやらせてあげたい」というのはありません。同点だったら3年生というのはあるけど、明らかに差があればどんな事情があっても変わらない。たとえその子が3年生で最後のコンクールであっても関係ない。そうやって決めるからこそ、みんなが納得できる。「なんで、あの先輩は下手なのにレギュラーなの」と思われた方が大変です。

強豪校はわかりませんが、「3年生は全部出る」という学校もあるかもしれません。でも僕が教えてきた学校ではそれはやっていない。

ただし、メンバーが少ないときは上手だろうが下手だろうが全員出します。人数が足りないのにわざわざテストをすることはありません。1年生を全部出しても足りないときは、競争も何もありません。

プロのオーケストラでも若い人がコンサートマスターになって、20年も30年も吹いている人に指示することもあります。だから学年は関係ありません。例えば、陸上のリレーのメンバーに、3年生ででも足の遅い子を出すわけにはいかないのと同じです。

だから、部長・副部長、あるいはパートリーダーの子がレギュラーから外れる可能性もあります。実際、あるときには副部長が外れました。とにかく、レギュラーはあくまでテストで決めます。

野球などでも試合に出ないキャプテンもいっぱいいます。リーダーとして部員をまとめることはできても、技術がないということはよくあります。でも、みんなリーダーであることは認めているから、ぎくしゃくはしません。

この子はリーダーだからキャプテンだから残してあげよう、ということはしません。上手な子を落とすことはしますが、下手な子を上げることはしないのです。

普通の子どもたちをできる子にする 怒らない教え方』より

屋比久 勲(やびく・いさお)
九州情報大学教授。
1938年生まれ。沖縄県出身。琉球大学教育学部卒業。沖縄県垣花小・中学校で教諭をしているときに吹奏楽部を創設し、初めて顧問になる。その後、赴任した真和志・石田・小禄・首里の各中学校の「普通の中学生」をそれぞれ全国大会出場に導く。
また、真和志中学校を沖縄県として初めて全国大会金賞に導き、以降多くの学校を全国金賞に導く。
その実績が高く評価され、90年に福岡工業大学附属城東高等学校へ迎えられ、同校を全国大会金賞に導く。2007に鹿児島情報高等学校へ。14年に同校を退職し、九州情報大学の教授に就任。
全国大会出場回数は総計30回、うち金賞を14回受賞。通算出場回数や金賞回数もさることながら、着任した多くの学校を全国大会に導いたことなどから、「吹奏楽の神様」と称される。

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