2014.10.04

あなたの周りにもいるかもしれないちょっと「?」な医者の見分け方---年間2万人が訪れるERを率いる医師が教える 医師でも間違える病気・ケガ・薬の新常識(4)

林 寛之

○「貧血」と言われて鉄剤を処方され、検査は血液検査のみしかしていない
貧血は言わずとしれた血液が薄い病気。鉄欠乏性貧血の場合、鉄剤で治療しますが、どうして貧血になったのかの原因をきちんと探す必要があります。消化管から血液がじわじわ出ていってしまった(胃癌、大腸癌など)、婦人科疾患のため生理のたびにたくさん血が出てしまった(子宮内膜症、子宮筋腫、子宮癌など)、その他血液疾患など、調べて悪い病気が無いとわかって初めて、鉄剤で数か月治療していくわけです。

原因も探さないでいきねり鉄剤だけで様子を見るのは、癌を放置してしまうことにもなりかねません。

○「下痢」に対して漫然と長期に下痢止めを出す
下痢は実によくある疾患であり、全身状態がいい限りそれほど慌てないことが多い。通常数日でおさまってしまうはずであり、それが数週~数か月と続いているのに大腸の検査もしないで、下痢止めの量を増やして様子だけ見るのはいただけない。

恐いのは大腸癌。右側の大腸に癌ができると、便と勘違いした腸は一生懸命便を出そうとゴロゴロと蠕動運動が亢進するため、便が軟らかくなってしまう。やけに痩せてきたなぁと思ったら、大腸癌が転移してしまっていたなんて話は悲しいです。

○「年のせい」「自律神経失調症」「胃捻転」「胃痙攣」が口癖
年のせいと、何でもかんでも加齢のせいにして冷たい医者は信用できません。

「もう長生きしたから、いつ死んでもいい」と高齢の患者さんは言うものの、「今はいやじゃ」と言うものです。病気をなくすのは不可能でもうまく共存していくことはできます。何でも年のせいにして、治療を放棄するのは「誠実」ではないですね。

診断がわからない時の常套句「自律神経失調症」。こんな病名を繰り返し使うのはよくわかっていない証拠。胃は捻転もしなければ痙攣もしません。胃のあたりが痛い時には、きちんと胃潰瘍なのか、膵臓なのか、胆道系なのか、はたまた心臓や大動脈が悪いのか、真面目に見ていく姿勢が必要です。検査の量と優秀さは比例しません。命に危険な病気をまず除外し、頻度が高い疾患から治療し、治りが悪い時に初めてさらに検査を追加していくというアプローチができれば、医療経済的にも合格なのです。

検査・治療方針でちょっと「?」な医者の見分け方

○ 新しい薬が好き/新しい検査は嫌い
実はなんでも新しければいい訳ではないのです。新しい薬はそれだけ副作用がわかっていないだけで、薬に関しては慎重に越したことがありません。薬価(薬の値段)も高いのです。一方、検査に関しては、新しい危険の少ない検査(非侵襲的検査といいます)がいろいろ開発されてきています。より危険が少なくより正確な検査は新しい方がいいですが、薬に関しては慎重派の医者が信頼がおけます。

○ 薬や検査の料金について話さない

○ 検査や薬が多い
医療経済を考慮して、無駄な検査や治療をしないというのは非常に大事です。ただの風邪に5~7種類も薬を出すなんてありえません。飲み薬だけでお腹が膨れてしまう場合は、薬そのものによる相互作用で副作用がでてしまうこともあります。

薬は極力少なくするように配慮してくれる医者は信頼がおけます。もちろん薬がたくさん必要な患者さんもいますので、本当に必要かどうかきちんと説明してくれる医者を探しましょう。無駄な検査をすればするほど、診断能力は落ちます。

すぐに高い検査ばかりするのは、ちょっと「???」なんです。頭をぶつけたらすぐにCTがいるかというと、そうでもないんですけどね。日本の保健医療が世界と比べて安すぎるのも問題構造を難しくしているので一概には言えないこともあります。

年間2万人が訪れるER(救急)医が教える 医者でも間違える病気・ケガ・薬の新常識』より

林 寛之(はやし・ひろゆき)
福井大学医学部附属病院総合診療部教授。
1986年自治医科大学卒業。トロント総合病院救急部での臨床研修、僻地医療を経て、福井県立病院救命救急センター勤務後、2011年4月より現職。
年間2万人が訪れる救急医療チームの責任者として、福井県のたらい回しゼロに大きく貢献する。「家庭を大事にできないと、患者さんを大事にできない」がモットーで、過去に3ヶ月の育児休暇を取った経験がある。
『プロフェッショナル 仕事の流儀』『総合診療医ドクターG』(いずれも、NHK)など、メディア出演多数。また、救急救命のスペシャリスト・研修医の指導医として、北は北海道、南は沖縄まで、全国各地の病院や医療施設で医師や研修医向けの講演や研修会を多数行っている。
著書に、医学雑誌の大人気連載を書籍化した「Step Beyond Resident」シリーズ(羊土社)、多くの医師がお世話になっている『研修医当直御法度』(共著/三輪書店)など、医師向けのベストセラーを多数出版しているが、一般向けの書籍は本書が初めてとなる。

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林寛之・著
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年間2万人が訪れる福井大学病院の救急医療チームで活躍しており、さまざまな緊急患者や重病患者を診ている著者だからこそわかる「病気・ケガ・薬の新常識」。巻末に医者や病院の新常識も収録。

・「心筋梗塞=胸が痛い」とは限らない
・「ボケた!」と思っても5割は別の病気
・痛み止めは何でも効くわけではない
・信用できる医者 信用できない医者の見分け方
・「専門医を呼べ!」は必ずしも正しくない

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