世界基準の教科書「生態学」編で大型シリーズ完結!

『大学生物学の教科書』第5巻前書き
石崎 泰樹

 本シリーズは以下の構成となっている。

第1巻(細胞生物学): 細胞の基本構造、エネルギー代謝、植物の光合成

第2巻(分子遺伝学):染色体と遺伝子の構造と機能

第3巻(分子生物学): 情報伝達、遺伝子工学、免疫、発生と分化

第4巻(進化生物学): 進化のメカニズム、系統樹、種分化、地球上の生命の歴史、動物の進化と多様性

第5巻(生態学): 環境と生物、個体群、生態学と進化生物学、生態学的群落、地球のエコシステム

 第5巻では生態学の概要を学ぶことができる。第23章では生物とその外部環境から構成される生態系、それを研究する学問である生態学とは何かが記載され、生態学の重要概念である個体群、群落、景観、生物圏、エコシステム、バイオームなどが紹介されている。第24章では個体群の動態とその制御について、第25章では生物種間相互作用について、第26章では群落および群落における生物種多様性の重要さについて、第27章では地球のエコシステムについて、興味深い実験を交えて紹介されている。地球のエコシステムは人類の活動によって大きく影響を受け、気候は大きく変化し、生物種多様性は急速に失われつつある。

 このエコシステムを回復するためには、科学的知識が必要であることはもちろんであるが、国際的な協調が不可欠である。本書227ページの「最先端」に記載されているように「人類は協調性を持つように特異に進化した」とすれば、我々人類はその特質を生かしてエコシステムの回復を目指さなければならない。

 本書230ページに「我々は科学技術にもとづく文明を持っている。そして我々は賢明にも、ほとんど誰も科学技術を知らなくてもすむように文明を発展させた。これが場合によっては大惨事につながることは容易に想像できるだろう。つかの間、この無知とパワーの危険な混沌状態から目をそらすことはできるだろうが、早晩大惨事がやってくることになる。(中略)科学技術のパワーが適切かつ慎重に利用されるためには、我々自身が科学技術を理解しなければならない」というカール・セーガンの言葉が紹介されているが、第5巻を読了すればこの言葉の重みが実感されるであろう。

 この第5巻をもって本シリーズも完結することになる。本シリーズを通読すれば現代の生物学を概観することができる。しかし、生物学はまだまだ奥が深い。興味をもった方はぜひ『PRINCIPLES OF LIFE』や『LIFE』(原書9版)に挑戦してみてほしい。

 第1~3巻の監訳者まえがきで、本書翻訳過程における学問的チェックを含めた多大のご尽力をいとわなかった渡辺圭太氏ら講談社ブルーパックス出版部と、出版不況という厳しい状況で学術書の刊行を英断した講談社経営陣に感謝した。今回は渡辺氏に代わり小澤久氏にご担当いただいたが、小澤氏には「最初の読者」として極めて的確なご指摘をいただき、大いに助けていただいた。

 第1~3巻は望外のご好評をいただくことができた。医学部の学生でも数千円の教科書すら購入せず、勉強は教員が準備した配付資料のみですましているものが多い。こういう勉強のしかたでは、知識の体系的な積み重ねは困難であろう。

 教科書を手元に置く意味の一つは獲得した知識の体系化が容易になることであり、体系化された知識でないと使い物にはならない。この点では、本シリーズは、容易に通読可能で魅力的な図が豊富に存在することから、細かい知識が詳述された大部の教科書よりも格段に優れているといえる。

 改めて本シリーズの読者に深く感謝したい。このような学習意欲の旺盛な人々がいる限り、日本の将来は存外明るいのかもしれない。

 このまえがきを読んで、買うか買わないか迷っている方々には、下記の箴言を引用して終わることにする。

“As difficult as learning may be. ignorance is even morecostly."「どんなに学習がつらいものでも、無知の方がずっと高くつくものである」(第3巻375ページ)

                    監訳者を代表して 石崎泰樹

目次
第5巻 生態学
第23章 環境における生物
第24章 個体群
第25章 生物種間相互作用の生態学的・進化論的意義
第26章 生態学的群落(コミュニティ)
第27章 地球のエコシステム
第1巻は細胞生物学
第2巻は分子遺伝学
第3巻は分子生物学
第4巻は進化生物学

著者 D・サダヴァ(クレモント大学教授)

著者 D・M・ヒリス(テキサス大学教授)

著者 H・C・ヘラー(スタンフォード大学教授)

著者 M・V・プライス(カリフォルニア大学リバーサイド校名誉教授)

監訳者 石崎泰樹(いしざき・やすき) 
一九五五年生まれ、東京大学医学部医学科卒業。現在、群馬大学大学院医学系研究科教授(分子細胞生物学)。医学博士。

監訳者 斎藤成也(さいとう・なるや) 
一九五七年生まれ、東京大学理学部生物学科卒業。テキサス大学ヒューストン校生物医科学大学院修了。現在、国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門教授。Ph.D.。
『 カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第5巻 生態学 』

D・サダヴァ他=著
石崎泰樹・斎藤成也=監訳

発行年月日: 2014/9/20
ページ数: 240
シリーズ通巻番号: B1876

定価:本体  1400円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)