「老後の生活費はだんだん減る」は嘘だった! 「老後難民」時代を乗り切るための「逆算の資産準備」とは?

『日本人の4割​が老後準備資金0円』第1章より

必要資金総額1億5,000万円!

ここで再び、退職後の生活に必要な資金総額に話を戻しましょう。

・退職後の生活水準は、現役最後の頃の生活水準に大きく規定される。
・そのため、現役最後の年収との対比(これを欧米では Target Replacement Rates、目標代替率と呼ぶ)で退職後の生活費を考える。日本の場合には、68%を退職後の年間の必要総額として想定する。
・年間の必要総額は年齢を重ねても減らないと考える。
・退職直前の年収を平成24(2012)年の「民間給与実態統計調査」(国税庁)における50代後半男性の平均給与618万円と仮定する。
・退職後の生活を60歳から95歳までの35年間と想定する。

これらをもとに、退職後の必要総額が計算できることになります。具体的に計算してみると、退職後の必要資金総額は1億4,708万円(=618万円×68%×35年間)。かなり大きな金額になって、ちょっと目を回しそうな感じです。少なくとも普段の生活の中で1億円を超える金額を身近に感じることはありませんから、今ひとつその大きさが実感できませんよね。

でも、これが現実なのです。

もちろん、これをすべて自分で用意する必要はありません。心配だとはいっても、ある程度公的年金がカバーしてくれるはずです。今度はそれを計算してみましょう。同じく計算の前提ですが、

・サラリーマンを想定して、厚生年金の受給額を平成26(2014)年度の標準世帯の年金額22万6,925円を参考に、月額23万円と想定する。
・65歳支給開始として、95歳までの30年間をこの金額で受け取れることと想定する。

これで年金受給総額は、8,280万円(=23万円×12ヵ月×30年間)となります。もちろん、これまでみてきたとおり、この金額がこれからもずっと受け取れると考えるのはあまりにも楽観的に思えますが、ここではまず、この想定を前提にしてみます。

必要総額と年金受給総額の差額が自分で用意しなければならない金額、すなわち自助努力の金額ということになりますが、その金額は6,428万円。アンケートの平均金額3,000万円弱の2倍以上が、自助努力で必要という計算になりました。

将来の年金受給額の減少が怖い

自助努力で用意する資金6,428万円。果たして、ここまで必要でしょうか。数字で遊ぶつもりはありませんが、退職後に退職直前年収の68%も必要としない生活ができるのであれば、自助努力の総額はもっと少なくて済みます。たとえば、68%ではなくて60%ならその金額は1億2,978万円で、年金の分を差し引いた自助努力の金額は4,698万円に下がります。もし、多くのサラリーマンが期待しているように50%の生活費で生活できるのであれば、総額は1億815万円で、自助努力は2,535万円で済みます。

このあたりまで下がれば、中には退職金だけでなんとかカバーできるという人も出てくるかもしれません。でもその一方で、年金受給額が現状どおりに続かないと考えると、今度は必要額が増えることになります。たとえば、月額23万円が20万円まで減ったと仮定すれば、年金受給総額は7,200万円で、68%の必要額だとすると7,508万円が必要になります。

たいへんな金額になりました。たとえ50%の生活費だとしても、3,615万円の自助努力が必要になります。

その年金額で本当に暮らせるか?

ところで、納付者を特定できない公的年金の納付記録が5000万件以上あったことが発覚し、「消えた年金」で大騒ぎとなった2007年当時、何度か不思議に思ったことがあります。それは、年金が2つの側面でしか語られておらず、最も肝心なところを避けているように思えてならない、ということでした。

「消えた年金」はまさしく手続きの問題で、結果として大きな影響を与えることになりますが、何はともあれ、手続きをしっかりすべきということでした。もう一方の議論は、年金財源の問題で、税金から一部負担するのか、消費税を財源にするのかといったものでした。

でも一番肝心なことは、「その年金で私たちが老後を暮らしていけるかどうか」ではないかと思います。「100年安心」は、制度が続くから「安心」なのではなくて、それで生活ができるから「安心」でなければならないはずです。どうもその肝心なところが議論から抜け落ちていたように思います。というよりは、もしかすると、生活できるかどうかという点で「安心」を謳うことができないから、あえて議論を避けていたのかもしれません。

いずれにしても多くの国民は、老後の生活費を年金で賄いきれるとは信じていないはずです。

さらにいえば、政府はここでこそ「将来の年金はみなさんの老後の生活を十分にカバーできません。そのため自分で準備することを忘れないでください」と発表する必要があると思いませんか? 米国でも、英国でも、そういった政府のある意味で正直な現状認識が、国民の資産形成を後押ししているのではないかと思えてなりません。

なんとなく知っているのではなく、明確に知らされていることが、国民が「事」を始める大きなきっかけになるものです。それが現在の若い人たちにとって本当にためになることだと思います。