「老後の生活費はだんだん減る」は嘘だった! 「老後難民」時代を乗り切るための「逆算の資産準備」とは?

『日本人の4割​が老後準備資金0円』第1章より

必要老後資金は所得に比例

だとすると、こんなアンケート調査は意味がない!? なんて思わないでください。

これを年収別にすると別な点がみえてきます。きれいに「年収が高い人ほど老後の資金は多く必要だ」と回答していることがわかります。年収300万円未満の方は平均2,576万円、700万円以上1,000万円未満の年収の方は3,576万円、1,000万円以上1,500万円未満の年収だと4,336万円。ほぼ1,000万円ずつ増えています。

これは、「人は年収が上がるにつれて生活水準を引き上げており、退職したからといってその生活水準を簡単には引き下げられない」ということを表していると思われます。これらはアンケート調査から得られた重要なポイントです。

私たちは、少しでもいい生活をしようと一生懸命働きます。その結果年収が増えて、30代よりも40代、40代よりも50代と暮らし向きが上がるように努力します。しかし、それに伴い、老後の生活水準も必然的に上がってしまうことに注意が必要なのです。

若い時代には、「老後にそこまでの生活費は必要ではない」と考えて、十分な対策を取らずに収入の多くを日々の生活に費やしてしまいがちです。しかし、それを続けていると結局、無駄に生活水準が引き上がり、準備不足のまま生活水準の比較的高い退職後の生活に突入することになってしまいかねません。

退職のような大きな変化の中でも、こうした行動バイアスが起きることをよく理解しておく必要があります。

ちなみにアンケートでは、「退職前後で生活費はどう変化すると思うか」についても聞いているのですが、「退職したら生活費は現役時代の半分以下になる」と答えた方が40.9%にも達しています。しかし、実際にはそんなに少なくありません。

フィデリティ退職・投資教育研究所が総務省統計局の2009年家計調査をもとに、50代後半の生活費と65歳以降の生活費を、条件をできるだけ同じように調整して比較してみたところ、「退職後の生活費は現役最後の時代のだいたい68%」であることがわかりました。また、最近セミナーでお話をさせていただくたびに、参加者に同じ質問をしていますが、ほとんどが「7割くらい」か「変わらない」と答えています。

50%と68%の差、これはかなり大きなものになります。退職直前の年収が600万円の方なら300万円と408万円、年間108万円の差、35年間で考えると、3,780万円の不足をもたらすことにつながります。ちょっと大きな金額です。

しかも気になるのは、若い人よりも50代のほうが、「半分以下になる」と思っている比率が高いということです。困ったことです。

「老後の生活費はだんだん減る」の嘘

「退職直後は旅行をしたい、時間ができるのでいろいろ活動したいと思うだろう。だから、お金は必要だが、それも10年続くかな。そのあとはそれほど活動的になるわけではないから、きっと生活費は少なくなっていくはずさ」

こんな指摘をされる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに希望的観測としては、だんだん減っていってほしい。また実際、交際費、食費や衣料費は減っていくと思います。しかし、着実に増えると懸念される費用がひとつあります。それは医療や介護の費用。勤労者3万人アンケートでも、「退職後の最大の支出」として60.9%(複数回答)が挙げているのが「医療費」なのです。

ちなみに、1人あたりの医療費総額をみると、55-59歳では年間26.0万円が、65-69歳では44.5万円、80-84歳になると89.1万円へと急増します。もちろん、大半が保険でカバーされるので、自己負担がそこまで大きくなるわけではありません。けれども将来の高齢化を考えると、いつまでも保険で賄いきれるとはいかないでしょう。その分、いつかは自己負担が増える可能性も高いと覚悟したほうがいいと思います。

年齢を重ねるにつれて、そして高齢化率(全人口に占める65歳以上人口の比率)が高まるにつれて、最大支出項目である医療費が増えていくことになるので、食費や基礎生活費が減ったとしても、果たして生活費全体が減っていくか心配なところです。よくて横ばいと考えておいたほうが無難なのではないでしょうか。

そこでみていただきたいのが、厚生労働省が発表している「老齢年金受給者実態調査 平成23年」です(図表3)。これによると、夫の年齢階級別の世帯平均支出は、なんと、いずれの年齢層でも月額20万円台後半となっています。

60代前半で29.9万円、90歳以上でも25.8万円で、平均として60代でも90代でもほとんど変わらないというのは驚きです。しかも、こうしたアンケート調査では、回答者は限られているものですから、もしかすると入院でもしてもっとお金のかかっている人ほど、アンケートに回答できていない可能性があります。だとすると、実際はもっとかかっているのかもしれません。