「老後の生活費はだんだん減る」は嘘だった! 「老後難民」時代を乗り切るための「逆算の資産準備」とは?

『日本人の4割​が老後準備資金0円』第1章より

さて、今の30代が高齢者の仲間入りをする35年後の日本の人口構成をみてみましょう。

国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、35年後の2050年の日本の人口は1億人を下回って、9700万人強となっていると見込まれます。現状から約3000万人も減少しているわけです。65歳以上の高齢者は3800万人弱で、現在から800万人程増えており、減少はもっぱら現役世代です。20-64歳の人口は4600万人強で、現在より3000万人ほど減る推計です。さらに19歳以下も1000万人ほど減って、1300万人くらいになります。

20-64歳の人口が4600万人強で、全人口に占める比率は47.8%。すなわち、20歳から64歳までの、現役世代だけでなく、専業主婦や学生など全員で高齢者と未成年者を支えるとしても、1人が1人以上の面倒をみなければならない時代ということです。

そう理解すると、現在の現役世代が"支えられる時代"には、高齢者向けのサービスは需給バランスから考えても、価格が上昇することは避けられません。高齢者向けサービスは、他の産業よりも人的サービスとなる側面が強いものです。しかも、その担い手たる現役層が少ないだけでなく、重労働であることからやはり敬遠されるビジネスでもあるため、供給が少なくならざるを得ません。

一方で、高齢者は増えることがあっても減ることはありませんから、需給バランスが引き締まることは避けられないのです。もちろんインフレの時代になれば、さらに高齢者向けサービスの価格は上がる可能性が高いといえます。

もし、現在用意している、または用意しようとしている老後資金がそれなりの金額になっているとしても、実際その時点になってみたら十分ではないということもあり得るのです。その場合には、思った以上に生活に困窮することになりかねません。しかも最もサポートが必要で、最も自分の対応力が弱くなっている人生の最後半の時期に。

アジアで一番悲観的な日本人

日本の現役世代が将来に対してかなり悲観的になっています。

2012年にフィデリティ・ワールドワイド・インベストメントが行ったアジア8ヵ国10都市でのアンケート調査(対象は25-54歳、5186人)の結果は、かなり衝撃的でした。「10年後の自分が所属する所得階層は今の所得階層と比べてどうなっているか」と聞いた設問に対し、東京は「悪化する」と回答した比率が36%と、10都市中最悪の水準でした。「変わらない」の36%と合わせると、実に72%が「良くならない」と答えていることになります。中国やインドの都市が6割から8割の水準で「良くなる」と答えていることと比べ、いかに日本の現役層が悲観的になっているかがわかります(図表2)。

単純に考えても、中国やインドと日本では経済の発展段階が大きく違っていますから、まだ発展の余地の大きい国や都市では、経済発展への期待が大きく、その"期待の差"がこうしたデータに表れてもいるのでしょう。でもその一方で、これだけ突出した日本の数値の悪さには、少子高齢化による将来への漠然とした不安が影響していることも容易に理解できると思います。

勤労者3万人の切実なホンネ

2014年4月に実施した、勤労者3万人に行ったアンケート調査では、「公的年金以外に必要な老後の資金は総額でいくらか?」という設問に対する回答の平均が2,952.8万円でした。これを年代別、性別に平均値をとってみると、ほぼどの年代も、男性女性にかかわりなく、3,000万円の上下1割程度の範囲に入ってしまいます。

いろいろな角度からこのデータの持つ意味を考えてみると、どうも「1,000万円では少ないと思うけれど、5,000万円なんてとても自分で用意できない」、こんな心理が各年代、どちらの性別にも働いているように見受けられました。これは、行動経済学でいうところの「アンカリング効果」です。

人間は事前に聞いたり、ほかのことで考えていたりする数値を、知らず知らずのうちに"自身の数値に関するあるべき基準"として持ってしまうことがあります。たとえば、もともと1万円の値段のウイスキーでも、「3万円の小売価格から値下げした」と表示するだけで「安い」という印象を受けます。これは、3万円という設定がアンカリング、すなわち船の錨のように人の意識の中に残り、これと比較することで数値を判断してしまうという人間の意思決定のクセともいうべき行動バイアスのことです。

多くの人が、老後の資金はかなり必要なはずだという意識がある一方で、5,000万円以上だととても自分の力では作り出せないと思えば、その間の区切りのいい3,000万円程度に収めようとする意思が潜在的に働いている可能性があります。すなわち、本当はもっと多く必要なのに、回答の平均値は実際よりも小さくなっているのかもしれないわけです。