研究 欧米ではどんどん減っているのに なぜ、日本人ばかりが「がん」で死ぬのか

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一般的に言われるもっとも大きな要因は「高齢化」である。

「他の先進国と比較して、日本では高齢化のスピードがものすごく速い。それが、がん死が増えている一番大きな要因だと言えるでしょう。日本のがん死亡者数は、団塊の世代が80代後半になる2030~2035年くらいまでは、増加し続けると思います」(大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座教授・祖父江友孝氏)

高齢化が進むほど、がんの患者は増える。これはまぎれもない事実だ。

「がんは遺伝子の異常が積み重なることで発症します。その異常の多くは、生活習慣に由来する炎症や化学薬剤、放射線など外的要因によるもの。あるいは、新陳代謝で細胞が分裂する際に、ある一定の確率で遺伝子に異常が起こります。

つまり、長生きすればするほど遺伝子に異常が起きる可能性が増えるので、がんになる確率も高くなるというわけです」(北海道大学大学院医学研究科探索病理学講座特任准教授・西原広史氏)

 

言ってみれば、がんは老化現象の一つ。年を重ねれば、がんになるのは当然とも言える。実際、日本での統計(国立がん研究センターがん対策情報センター)を見ても、高齢になるとがんの患者数はぐっと増える。50~54歳でがんを患っている人は約3万3000人。それが60~64歳になると約9万5000人、70~74歳になると約12万2000人となる。

食事が原因?

高齢化が進むにつれてがんに罹る人が増え、医療が追い付いていかない。結果、がんで死ぬ人が増えていく。

だが、それだけでは説明がつかない事実がある。

考えてみれば、日本では特に急速に進んでいるとはいえ、高齢化は欧米諸国でも問題となっている。65歳以上の高齢者が総人口に占める割合を示す高齢化率を見ると、日本は世界1位で24・4%。アメリカは13・63%(世界41位)と低めだが、ドイツは21・1%(同2位)、イタリア20・82%(同3位)、フランス17・47%(同16位)など。高齢化しているのは同じだが、ドイツ、イタリア、フランスではがんの死亡数は増えていない。

西台クリニック院長の済陽高穂医師は、アメリカでの例を挙げて、食生活の変化が要因だと指摘する。

「アメリカでは、がんなどの現代病が増え続けて国家の財政を圧迫していることが1970年代から問題視されていました。それで当時のフォード大統領が、栄養問題特別委員会を設置し、国民の栄養と病気の関係を徹底的に調査させたんです。その結果、現代病は薬では治らない。がんを減らすには食事の内容を変えなくてはいけない、ということがわかった。それを受け、FDA(アメリカ食品医薬品局)や米国国立がん研究所が、健康のための数値目標を設定したり、がん予防に効果があると言われる食べ物の作用の研究を進めるようになりました。その国家プロジェクトの成果が実って、'92年以降、増え続けていたがんの死亡数が減少に転じたのです」