右を見ても、左を見ても「正論バカ」が日本を滅ぼす なんでも「シロ」「クロ」つけないと、納得できない人が急増中!

週刊現代 プロフィール

「今の時代、最初は1~2名からの批判でも、ネットが増幅器の役割を果たし、何十何百倍に膨れ上がる可能性がある。そして、それがまるで世論であるかのような認識をされてしまう。そうなってから反論したとしても、企業に得るべきものはなく、リスクのほうが大きい。なので、企業側は先回りして自粛するわけです」

正論を言えば、大企業が自分にひれ伏す—そんな錯覚を抱き、日々、企業の悪事をパトロールする人々がネット上で増殖している。

前出の濱田逸郎氏が彼らの手口を補足する。

「目的の企業だけではなく、取引相手にまで攻撃をしかけるのです。『電突』と呼ばれ、『なぜあんな企業のスポンサーをしているのか。説明しろ』と、直接電話で要求する。始末の悪いことに、相手の電話番号を含め、『電突の仕方』といったマニュアルがネットに公開される。法的にも対処のしようがなく、スポンサー企業としても門前払いすることができないんです」

こうした現状が、企業側にも一つの「歪み」を生んでいる。「正論バカ」に呼応する「コンプライアンスバカ」の登場である。

前出とは別のある保険会社は、5年ほど前、公式フェイスブックサイトの立ち上げを検討した。

「マーケティング担当役員が、2000万円以上かけて調査会社に委託したんです。でも最終的な結論は『炎上が怖いからサイトは作らない』。部署の若手は『やる価値はある』と反論しましたが、『何かあったらお前ら責任とれるのか』という上司のひと言でオシマイです」(同社社員)

話はこれで終わりではなかった。この社員が続ける。

「それから数年後、他社の様子を見て、さほど危険はないと判断した役員が、SNSを使ったマーケティングをやっと導入したんです。でも、他社がやった後では話題にもならない。システム作りにムダなおカネを遣っただけで、たいした効果はありませんでした。

問題は、完全に仕事として失敗しているのに、数年前に導入に反対した上司は何の責任も取らされないということ。『コンプライアンスを重視して慎重に仕事をした』と主張する社員を、会社としてはマイナス評価しにくいんです」

コンプライアンスバカも、正論バカの一形態だと言える。あれも危ない、これも危ないと、他人の仕事のリスクばかりを挙げつらって潰し、自分自身は何のリスクも負わないし、何も生み出さない。

問題が起きたら逃げる

「コンプライアンスバカというのは、わりといい大学を出てお勉強ができる人に多い傾向がある。子供の頃から優等生として育ち、ミスをしたくない、評価を下げたくないという思いが強い。そのため、トラブルが起きる前に回避することばかりを考えて、ツケが現場に回ってくるのです。しかも、こういう人に限って、本当に問題が起きた時には責任逃れをして、まるで役に立たない」(東京工業大学特任教授の増沢隆太氏)