代々木ゼミナール「代ゼミ」の誤算 カリスマ経営者が死んだ後に

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たとえば、京都市下京区の烏丸通の一等地にある代ゼミ京都校の別館は4年前ホテルに改装されたばかり。一人一泊2万円以上の宿泊プランが並ぶ高級ホテルに生まれ変わっている。

3年前には東京・代々木駅近くの校舎跡地に「代々木ヴィレッジ」というカフェやバーを中心とした商業モールが開業。音楽プロデューサーの小林武史氏などが事業に関わり、足を踏み入れると、女性客でにぎわっている。

代々木ヴィレッジが開業したのと同じ年には、札幌市内の代ゼミの寮を北海道大学に1棟まるごと賃貸する事業も始めているのだ。

「京都のホテルにしても、代々木ヴィレッジにしても、代ゼミ側が事業主と賃貸契約を結んでおり、代ゼミ側には定期的に収入が入るモデルです。地方では、1年ほど前に代ゼミ小倉校の売却が打診されたようだと話題になったこともあるほどに、代ゼミ物件は不動産業者やゼネコンが目を光らせている注目案件なのです。学校法人ですから簡単に土地は売却できないはずですが、今回、閉鎖となる地方の校舎の不動産をどう利用するかが、今後注目を集めるでしょう」(前出の大手ゼネコン幹部)

迫る「2021年」問題

ある大手デベロッパー幹部によれば、「過当競争で斜陽産業化した予備校ビジネスから撤退して、これからまた盛り上がりを見せる不動産事業に転換するとは、代ゼミの経営者は英断を下したという声も出ているほど」というが、これまで代ゼミを支えてきたのに早期退職を迫られる講師陣にとっては聞きたくないような話だろう。

「いずれ代々木ゼミナールという看板を下ろす日が来るのではないか」と言うのは、大学通信の安田賢治・常務取締役だ。

「代ゼミが買収したSAPIXが今後の経営のキーになるでしょう。代ゼミは難関大学の現役突破を目指す塾に『Y-SAPIX』という看板を掲げており、すでに経営の本丸はこちらに移っている。つまり、今後は浪人生ではなく現役生を中心とした経営に舵を切っていくのです。東大に合格できる生徒を中学から囲い込んで育てていき、東大や難関医学部などの合格実績を作ることで、ブランド価値を高めていく方向性です。となれば、浪人生を指導する従来の『代々木ゼミナール』という看板を下ろす日が来てもおかしくはない。本来はもう少し早くシフトすべきだったのでしょうが、ついに代ゼミがドラスティックな改革に乗り出したともいえます」

とはいえ、現役指導では前述したナガセがすでにブランド力を確立しており、いくら代ゼミが新機軸に経営資源を投入したとしても、そう簡単に集客を増やせるとは限らない。

「さらに、2021年度には大学入試改革が始まります。中教審が先日出した素案は、知識の偏重、つまり詰め込み型の受験勉強を否定しています。偏差値もなくなるでしょうし、今後は入学が容易で卒業が難しい欧米型の大学化が進む可能性もある。となれば、従来の塾は存在そのものが必要なくなってしまうのです。