「中国軍の戦闘機が8月19日、海南島周辺の公海上の空域を飛行中の(米軍機)P8ポセイドンに、異常接近した。数回にわたって、約9mの至近距離まで接近し、搭載する装備などを誇示したのだ。最後は6mの距離まで、これみよがしに異常接近した後、転換して立ち去った」
8月22日、アメリカ国防総省のカービー少将が、中国に対して怒りをブチまけた。
5月24日と6月11日には、中国軍の戦闘機Su-27が、東シナ海の公海上空で、自衛隊機に30mの至近距離まで異常接近し、小野寺五典防衛大臣が、厳重抗議を行ったばかりである。中国人民解放軍の空軍は、日本ばかりか、ついにアメリカに対しても、「無法行為」に出たのだ。
だが、中国国防部の楊宇軍報道官は8月23日、会見で次のように吠えた。
「アメリカの指摘など、デタラメだ。アメリカがわが国を不当に偵察していることこそが、地域の安全を脅かす一番の原因となっているのだ」
また、海外に対する習近平主席の「代弁者」の役割を果たしている中国共産党機関紙『人民日報』社発行の国際ニュース紙『環球時報』も、8月25日付の社説で、舌鋒鋭くアメリカを批判した。
〈アメリカの大統領も国防長官も、「中国を敵視しない」「アジアへのリバランス戦略は中国を念頭に置いたものではない」などと表向きは言っていながら、裏でやっていることは何か。北は大連沿海から南は海南島沿岸に至るまで、年間延べ500機、毎回10時間以上も偵察機を飛ばしているではないか。
そればかりか、50艘あまりの原子力潜水艦を始め、水声探測船、海洋地質観測船、ミサイル観測船、電子偵察船などを繰り出して、中国の海岸線から70km付近まで接近してくる。アメリカは国際法を遵守し、こうしたわが国に対する違法な偵察行動を、即刻やめるべきだ〉
中国が国内で政権の求心力アップを図るため、日本に対して挑発行為に出るのは、まだ分かる。だがアメリカを本気で怒らせることなど、常識的に考えればあり得ない話だ。
そもそも、中国が無法行為を繰り返し、日本、台湾、フィリピン、ベトナムなど周辺国・地域の脅威となっているから、アメリカが監視活動を強めているわけだ。そのため、どの国・地域もアメリカ軍の関与を歓迎している。それをアメリカが悪いと決めつけるのは、まるで放火犯が消防隊を非難するようなものではないか。
結局、米中は8月26日と27日に米国防総省で、不測の事態を避けるため、合同の作業部会を開いて、空や海での行動規範について話し合いを持った。だが、米中双方は激しい非難の応酬になったという。