[パラリンピアンの挑戦]
高桑早生、上昇気流に乗り始めたスプリンター

スポーツコミュニケーションズ

好記録連発の源は自主性にあり

 さて今シーズン、高桑が順調に記録を更新している理由を、高野コーチはこう語っている。

「一番大きいのは、自主性が出てきたことにあります。これまではこちらが言うことを言われるがままにこなしていただけという感じでしたが、今は違います。こちらが言ったことを自分の中できちんと咀嚼して理解したうえでやっている。だから、動きにずれが生じても、ちょっと言うだけで、すぐに調整できるんです。僕が頭の中で“こうしてほしいなぁ”ということを、彼女は頭で理解して、それを身体で表現することができる。だからこそ、今シーズンは練習してきたことをレースでも出せているんだと思います。7月にマークした13秒69も、僕は驚きませんでした。ゴールした瞬間に『これは出たな』と。練習で既に出る予感はしていましたからね」

 高桑の陸上に対する考え方、取り組み方が変わったことは、インタビューをしていても感じることが少なくない。どんな質問に対しても、彼女なりの答えが即座に出てくる。特に課題である部分を語る時の表情や口調がこれまでとは明らかに違う。例えば、レースで良くなかった部分を語る時、以前のようなどこか重々しい雰囲気はまったく感じられない。彼女の中でしっかりと理解し、今後どうすればいいかがわかっているからだろう。しっかりとした口調で答えるその表情はどこか清々しい。

 今シーズン、高桑が最も照準を合わせているのが10月のアジアパラ競技大会。そこでさらに自己ベストを更新するつもりだ。
「どういう結果が出るか、すごく楽しみです」
 4年前、首にかけたのは銀メダルだった。今度は表彰台の中央で、最も輝かしいメダルをかけ、センターポールに上がる日の丸を見つめる彼女の姿が見られるに違いない。今の彼女にはそれだけの勢いがある。

高桑早生(たかくわ・さき)
1992年5月26日、埼玉県生まれ。小学6年の冬に骨肉腫を発症し、中学1年の6月に左足ヒザ下を切断した。中学時代はソフトテニス部に所属。東京成徳大深谷高校では陸上部に入り、2年時には初の国際大会、アジアパラユースに出場。100メートル、走り幅跳びで金メダルを獲得した。2010年のアジアパラリンピックでは100メートルで銀メダル、走り幅跳びで5位入賞した。11年からは慶應義塾大学体育会競走部に所属。同年9月のジャパンパラリンピックでは100メートルで自身初の13秒台となる13秒96をマークし、日本記録に0.12秒に迫った。12年ロンドンパラリンピックでは100メートル、200メートルともに決勝進出を果たす。今年7月、100メートルで日本新記録となる13秒69をマークした。

(文・写真/斎藤寿子)