[パラリンピアンの挑戦]
高桑早生、上昇気流に乗り始めたスプリンター

スポーツコミュニケーションズ

タイムに表れた進化の跡

 そのスタートは、ベストではないにしろ、私の目にはいいように映った。きれいに素早く、義足の一歩目が踏み出せていたように見えたのだ。実際、本人に訊くと、「最近では一番と言っていいくらい勢いよく出ることができた」と語った。実は数日前までは、あまり良くはなく、重点的に練習してきたのだという。ようやくいい感触を得たのは前日のことだった。

「スタートで出せた勢いのままに、途中まではうまく走れました」と本人が語るように、前傾姿勢から上体を起こし、加速していくその様は、非常にスムーズできれいだった。余計な力みをまったく感じさせず、“地面を走る”というよりも、“空中を翔ける”といったイメージに近い走りに映った。

 だが、最後の10~15メートルほどだろうか、ゴール付近になって、急に走りが変わってしまったのだ。上半身は肩が上がった状態で横振れし、下半身はバネがなくなって動きに重さを感じた。果たして、本人はどうだったのか。
「後半はもったりとしてしまいました。上半身が崩れて、腕でもっていこうとしてしまいましたね」

 聞けばこの夏は北海道、妙高高原での合宿が立て続けにあり、妙高の合宿からはわずか1週間だという。「疲労は残っている」状態であり、最後までスタミナが続かなかったことが要因だった。それでも記録は13秒86である。「未来は明るい」と彼女が笑顔で語った通り、ほとんど調整できなかったにもかかわらず、13秒台のタイムを出したのは、明るい材料である。そしてここにこそ、昨シーズンまでの彼女にはなかった強さがある。