「あたしはお母さんの人生を認めるよ」――政治家・田中角栄 その傍にあり支えた佐藤昭 娘でなければ描き切れなった秘録 『昭 田中角栄と生きた女』

早野 透

角栄の生き方を振り返ると、それは「愛」というより「縁」というほうがほんとうかもしれない。日本海の風が吹きすさぶ越後という深々とした土俗の土地、15歳で上京してさまざまな人々との縁を結んで築き上げた人生、大学の青春で得る生涯の友というようなものは、角栄は持たない。学生時代の放歌高吟も哲学書の耽読もない。役所や大会社に入って同期生とか、よき先輩とかというつながりも持たない。一瞬一瞬が戦いであり、アンガージュマンであり、予定されない人生だった角栄の人生にとって、「縁」によって結ばれた女たちこそ必然であり永久であり、角栄の絶対に切ることのできない信頼関係だったのである。

愛が行きついたところに縁がある。愛は醒める。縁は切れない。
付け加えていえば、佐藤あつ子は、母昭がキャバレー「S」で働いていたことについて「母のこの過去を卑下する気持ちにはなれない。母は必死に生きていた。それは尊敬に値する」と書いている。あつ子はこの本の締めくくりにこう書いている。

「あたしは、お母さんの人生を認めるよ。だから、言うこと聞かなかったあたしのことも、赦してよ。もう、いいよね、お母さん」

角栄死して21年、佐藤昭死して4年になる。おそらく佐藤あつ子のこの本によって、角栄の物語は完結したのである。

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★ついに文庫版で登場!

著 佐藤あつ子
『昭 田中角栄と生きた女』
(講談社文庫/税抜価格:770円)

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「越山会の女王」と呼ばれた母とオヤジ・田中角栄が私に遺してくれたこと。三回忌を前に、父母の素顔を娘が綴る。

【目次】
序章 母の最期
第一章 オヤジからの手紙
第二章 出生の秘密
第三章 過剰な愛情
第四章 母の絶頂と転落
第五章 自殺未遂
第六章 やがて淋しき越山会の女王
第七章 母との対話
終章 柏崎にて
対談 「越山会の女王」の素顔 立花隆×佐藤あつ子

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