漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?
自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。
(作者:福本伸行 講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)
【第7回】はこちらをご覧ください。
仕事を分業し、細切れにすることで、生産効率を上げることができます。そのため、企業は積極的に分業を取り入れていきます。
しかし一方で、分業が導入されると個人間の関わりを薄くしてしまいます。そして、個人が全体の中で歯車化し、「自分が何をやっているのか」の意味づけが難しくなります。
資本主義の中では、企業が"効率"を求めれば求めるほど、分業が進み、その結果として個人が自分の重要性を感じづらくなるのです。
また、年功序列・学歴主義が崩壊し、社会の"階級システム"が崩れていくと個人個人が、自分の判断で自己実現をしていくよう求められます。「これからは、自分次第です!」と。
しかし、これまで分業が進み、個人は歯車化しています。個人は会社の中で、また社会の中でほんの一部分を担当する歯車になっているわけです。
資本主義の中で生き残るためには、効率も重要です。そのため、生き残るために分業が進み、"歯車"になっていくことは自然なことなのです。
"組織の歯車"を否定するわけではありません。むしろこの世の中では、ひとりですべての工程を行うことなどほぼ不可能です。能力としてそれが可能だったとしても、効率が悪く、他者との競争に負けてしまいます。
気づかなければいけないのは、ぼくらは全員"歯車"だということです。プロスポーツ選手は全員、チームのために機能する"歯車"です。イチロー選手が「このバッターは俺が打ち取る」と言ってマウンドに上がることはありません。サッカーのアルゼンチン代表のメッシ選手は、点を取ることに集中・特化しています。
現時点で、「歯車にならず、自分ひとりだけいれば、消費者に商品を届けられる」という人がいたら、それは単なる勘違いか、商品を年に数個しかつくらない特殊な職人などで、さほど効率性を求めていないかのどちらかでしょう。
個人で仕事をしているフリーランスも"歯車"です。「個人でデザイン事務所を経営している」「コンサルタントとして一人で仕事をしています」という人も、同じように"歯車"です。
自分で個人事務所をつくっているからと言っても、その人が担当する業務は、その商品をつくるうえでの"ごく一部分"にすぎません。デザイナーは、商品のデザインだけを担当しているにすぎません。コンサルタントは一部分の業務のアドバイスをしているに過ぎません。
どちらにしても組織として独立しているだけで、その人単独で最終消費者(一般のお客さん)に商品を届けられるわけではありません。社会全体でみると、ほとんどのビジネスパーソン、社会人は、"小さな歯車"なのです。
そして、その小さな歯車が、ある日突然、「これからは個人主義、実力主義ですから」と放りだされたわけです。「これからは、自分次第です!」と。
いきなりそんなことを言われても何もできないでしょう。歯車は単体では商品になりません。組織の一部に組み込まれてきた"歯車"に独り立ちを強制する方が酷です。
しかし時代は、ぼくたち"歯車"に自立を求めています。歯車が、自分で生きていく道と場所を自分で探すように求めています。ぼくらが生きていくのは、そういう時代だということを覚えておかなければいけません。