ASEAN(東南アジア諸国連合10ヵ国)の地政学を学ぶ、おそらく世界最高の日本人向けプログラムがいよいよ9月1日からシンガポールで始まる。その舞台は、国立シンガポール大学リークワンユースクール。マレーシアから斬り捨てられたシンガポールを、わずか50年の間に、人口当たりの億万長者の数が世界一というアジア一豊かな国に築き上げた国父リークワンユーが、その名をつけることを最初に許した組織だ。
今、日本の政府も企業もASEANへの関心を強めている。その背景にあるのが以下の3点だ。
・中国の賃金高騰
・日中関係の悪化
・ASEANの市場統合
中国はもはや賃金の安い国ではなく、賃金が高騰するペースは労働生産性が向上するペースより速い。また、日中関係の悪化が中国での生産や販売に大きな影を落としている。
一方で、人口約6億人、面積が日本の10倍あるASEANが提供する機会は増大している。シンガポールのように日本以上に人件費が高い国もあるが、それを除けばASEAN諸国の賃金は中国の半分から3分の1だ。経済成長のペースも急速で、10年後には日本のGDPに匹敵する規模になるだろう。しかも来年、ASEANは市場統合を目指す。税や規制が統合され、域内の人、モノ、金の動きが自由化されれば、ASEAN10ヵ国は一体の市場となる。外務省の調査によれば、ASEAN国民の9割が日本に好意を持っているという。その点でも、中国を抑えて最も重要なパートナーになるだろう。