篠崎史紀 第1回 「モーツアルトは宇宙人的な天才。ベートーヴェンはすべてが計算ずく」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ マロさんからみると、自分より上の世代のほうが凄い人が沢山いたんではないですか?

篠崎 それはその通りです。いまの人は完成形を知りすぎていると思うんです。音楽でいえばCDなどで完成形を知ることがいくらでも出来るわけですから、情報過多になっている。それによって物事を左右されている。でもむかしの人は情報が少なかった分、アイデアが豊富に出てきたんだと思います。

シマジ 創造性があったということですか。

篠崎 そうですね。いまの人は完成形を自分で生み出していくのではなく、すでにある完成形に自分を近づけていこうとしてしまうんです。だからどうしても独創性とか創造性が薄くなってしまうわけですね。ぼくたちより15歳以上上の人たちは、こだわりと自信を持っている人が多い気がしますね。

シマジ マロさんはいまおいくつですか?

篠崎 51歳です。まだまだこれからです。

シマジ それにしても、マゼールはベートーヴェンの曲を書き換えてしまうんですか。すごいね。マロさんだった出来ますか?

篠崎 恐ろしくてとてもそんなことは出来ません(笑)。ベートーヴェンはあまりに完璧すぎるんです。モーツアルトは宇宙人的な天才ですが、ベートーヴェンという人はすべてが計算ずくなんです。

彼の作品を最初から並べてみると、実験して、次にこう発展させて、という繰り返しをしてきたことがわかるんです。そして最後に第9に行き着く。それまでは貴族のための愉しい曲が主流だったのが、ベートーヴェンの登場によって音楽は大きく変わりました。作曲が哲学のようになって、クラシックがどんどん難しくなっていったんです。

シマジ ベートーヴェンがいたから作曲に印税というものが確立したそうですね。

篠崎 その通りです。自分の作品にきちんと番号をつけたのは彼が最初です。

〈第2回につづく〉

 

篠崎史紀(しのざき・ふみのり) 1963年福岡県生まれ。3歳より両親からヴァイオリンの手ほどきを受け、その後、江藤俊哉に師事。1979年史上最年少で北九州市民文化賞を受賞。高校卒業後はウィーン市立音楽院に留学し、トーマス・クリスティアン、イヴリー・ギトリス、また室内楽をバリリ・クァルテットやアマデウス・クァルテットのメンバーに学び、1982年ウィーン・コンツェルトハウスでデビュー。1983年ヴィオッティ国際音楽コンクール室内楽部門(デュオ)第3位、1986年ボルドー国際音楽コンクール銀賞受賞。1988年ウィーン市立音楽院修了後、群馬交響楽団コンサートマスター就任。1991~97年読売日本交響楽団コンサートマスター。1997年コンサートマスターとしてN響に入団。東京ジュニアオーケストラソサエティ、iichikoグランシアタ・ジュニアオーケストラの芸術監督、WHO国際医学アカデミー・ライフハーモニーサイエンス評議員も務める。
島地勝彦 (しまじ・かつひこ) 1941年東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任。現在は、コラムニストとして活躍中。主な著書に『乗り移り人生相談』『知る悲しみ やっぱり男は死ぬまでロマンティックな愚か者』(ともに講談社刊)など。Webで『乗り移り人生相談』『Treatment & Grooming At Shimaji Salon』を連載中。最新刊『Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である』(阪急コミュニケーションズ)が近日発売予定!

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