二宮清純レポート オリックス・バファローズ投手 西勇輝 覚醒した「やんちゃ坊主」

週刊現代 プロフィール

「好投が続いている最大の理由は粘り強さにあると言えるでしょう。これまでの西は、ピンチになると〝いってまえ!〟とばかりに勢いにまかせて投げていた。

ところが今季は、ランナーが出ても慌てることなく、1球1球、丁寧に投げている。加えてテンポがいいので、守っている野手にもいいリズムが出てくる。それが勝ち星に結びついているんだと思われます」

また佐野は「エース金子の存在がいい影響を及ぼしている」と見る。

「昨季の金子は、開幕24連勝を記録した田中将大(現ヤンキース)の活躍の陰に隠れていましたが、沢村賞投手の基準をすべてクリアしていました。西にとって、これ以上の見本はいない。球界のエースから、いろいろなことを学んでいるはずです」

それは事実だった。西に水を向けると、次のような答えが返ってきた。

「昨季、コントロールを乱して苦しむことが多かった。それで金子さんに〝どうしたら、いいんでしょう?〟と質問したんです。金子さんが言うには〝あまりコースを狙いすぎると、抜けた時は真ん中かボール球にしかならない。でも最初から真ん中を目がけて投げたら、逆にボールが散らばって、いいコースにいく。そう思って投げたらどうだ〟と。

これは目からウロコでした。それからは無駄な四球を出すくらいなら勝負した方がいいと。そう意識を変えたことで四球も少なくなり、ピッチングが良くなったと考えています」

中学時代から将来を意識

鈴鹿山脈の東の麓にある三重県菰野町の出身。小学2年で野球を始めた。

「投げるのが好きで、最初からピッチャーがやりたかったんです。昔から目立ちたがり屋なものですから、はい!」

中学では硬式のボーイズリーグに入った。もちろん、ポジションはピッチャー。

「ボーイズでは、思いっきり投げませんでした。肩やヒジを壊すのが怖かったんで……。〝そんなことで野球を終わりたくない〟との意識が常にありました」

10代前半で、そこまで考えて野球をやっていたというのだから、相当なしっかり者である。一方で、近所では評判の〝やんちゃ坊主〟でもあった。

「家を新築する際、大工さんに出すお菓子を先に食べて泥団子に替えたり、田んぼの稲を踏んで歩いたり、夜中にお寺に忍び込んで、勝手に鐘を鳴らしたり……。もう近所迷惑なことばかりやっていました。

だから親や姉は、いつも謝ってばかりでした。家には謝罪用の菓子折りが常に用意されていました」