[MLB]
佐野慈紀「カムバックの和田&藤川への高まる期待」

スポーツコミュニケーションズ

和田のカギ握る右へのクロスボール

 和田にとって、生命線となるのは、やはり低めに投げ続けられるかどうかです。もちろん、これはどのピッチャーにも言えることであり、永遠のテーマでもあるのですが、特に和田のようなタイプのピッチャーは絶対条件と言えます。例えば、岩隈久志(マリナーズ)ですが、彼も低めへの抜群の制球力を武器にメジャーで成功しているひとりです。しかし、彼はスピードもありますので、時にはストレートで押すこともできます。

 一方の和田は、球速は出ても140キロ台前半ですから、高めに甘く入れば、途端にメジャーリーガーにつかまってしまいます。しかもメジャーの場合は単打ではなく、長打になってしまうのです。だからこそ、緩急をうまく使いながらストレートを早く見せると同時に、低めにコントロールすることが和田にはより求められるのです。

 また、今後の課題は右バッターへのインサイドのボールでしょう。正直、まだ使い切れていません。右バッターに対しての、いわゆるクロスボールですが、これを現在はバッターが簡単に見逃している状態です。これはあくまでも私見ですが、ヤンキース時代の井川慶(現オリックス)がそうでした。結局、彼はこれを修正できなかったことが、メジャーでは成績を残すことができなかった要因のひとつだったと私は考えています。スピードで押すタイプではない和田にとって、ボールを速く見せるために、このクロスボールは非常に重要なボールです。ストライクゾーンからボール球になるような、右バッターが打ちにいかざるを得ないコースへのコントロールを身につけることができれば、たとえ90マイル(約145キロ)に満たないボールでも、バッターの体感速度としては90マイル以上になるはずです。

 さて、藤川はというと、現在は5試合に登板して、防御率1.69。ローテーション入りを確実にしつつある和田とは違い、藤川はまさにテスト中であり、結果次第によって今後が決まるというところでしょう。ローテーションピッチャー以上に、リリーバーの場合は、ポジションが確定するには時間を要します。ですから、藤川も焦ることなく、今は与えられたところで確実に結果を出し、少しずつ首脳陣の信頼を深めていってほしいと思います。

 藤川が阪神時代、彼のボールは「ホップしているようだ」とよく言われていましたが、そう見えていたのは、ホームベース上でもスピンの回転が弱まらず、球の強さがキャッチャーのミットに収まるまで持続していたからです。正直、現在は全盛期のボールが10だとすれば、7か8といったところでしょう。まだまだ球質は上がっていくでしょうから、阪神時代のように“絶対的守護神”としての姿をメジャーの舞台で見せてほしいですね。

佐野慈紀(さの しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商-近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日-エルマイラ・パイオニアーズ(米独 立)-ロサンジェルス・ドジャース-メキシコシティ(メキシカンリーグ)-エルマイラ・パイオニアーズ-オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6 球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。