海外で目にした「ハゲ」のブランド力! 「気に病む」日本人男性800万人のステータスを変えられるか

『なぜ世界でいま、「ハゲ」がクールなのか』第1回

なぜ女性のハゲを取り上げなかったかと言えば、男性には、「ハゲ始めたらボウズにしちゃいなよ」と言えても、女性に同じお勧めは、今のところまだしづらい、というのがあるためだ。もう何千年という間、世の中に組み込まれた、男と女の外見に対する固定的な考え方には、抗しがたいものがある。もちろん、抗ガン剤治療などで髪を失った女性たちによる、「髪なんかなくても美しい」というキャンペーンとかがあって、女性が堂々と坊主頭を世間にさらすこともある。勇気があると思う。ただ、男性に比べ、女性の坊主頭への社会的受け容れ度はまだまだ、というのが現実だ(*3)。

その反面、女性が容姿に手を加えて見栄えをよくすることに対しては、男性の場合より本人の抵抗は低く、社会の容認度は高い。その代表が化粧。その名の通り、化ける。でも、それは決して恥ずかしいことではない。化粧をしている女性に、「やーい、元が悪いから、上から塗ってごまかしてるぅー」なんてことは、まず言わない。それどころか、一定以上の年齢になると、化粧をしないで人前に出ることのほうがむしろ恥ずかしいことであるという考えが一般的になる。

化粧どころか、美容整形にしても、世の中の容認度はかなり高い。ツケマツゲなどまつげのカツラだけど、カワイイーの対象だし、バレても何の問題もない、女性の場合は。

ハイヒールもそう。これは単に背を高く見せるだけの目的ではなく、デザイン、ファッションの重要な要素なのだけど、男性にはない。というか、男性においては人為的に背を高くする行為は恥ずかしいもの、という感覚があり、そのためこっそり靴の中で調整するという手法が誕生したりしている。

カツラも同じだ。女性の場合は、薄毛対策であっても、ファッション目的だとしても、カツラ(ウィッグ)やヘアピース、付け毛の類を身につけることが恥ずかしいこと、バレてはいけないことだという扱われ方が通常されない。

これに対し、男性のカツラは、バレない、が大原則。事実を隠していることへの後ろめたさ、バレた時にからかわれる、バカにされるだろうという恐怖心。こうした感情が男性のカツラには付きまとい、その結果、宣伝などでも、「自然な感じに仕上がる」とか「何段階かに分けて気付かれないように増やす」といった誘い方がされる(これは増毛も同じ)ようだ。このため、多くの女性の場合と違って、ある時はカツラあり、だけど、別のシーンではカツラなし、なんていうパターンがほとんどない。

というわけで、本書の対象は、男性に多い加齢に伴うハゲ、にしぼりたい。

では、世の中にハゲの男性ってどれくらいいるのだろう。

まず、自分がハゲ(薄毛)だと思っている日本人男性は1260万人。成人男性のなんと3分の1を占める。20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降は四十数%となるそうだ(*4)。

そしてハゲを自認している彼らの半数以上が、ハゲである故に自分は外見的魅力がないと感じ、4割が、髪がフサフサな人と比べて「自信がない」と思っている。

また、ハゲていることを「気に病んでいる」という男性は800万人。さらに、650万人が何らかの対策をとったことがあり、500万人が今も対策中という(*5)。

このハゲとどう向き合うか。ハゲのステータスは変えられるか――。

これからいっしょに考えてみませんか。

【次回につづく】

*1 To Be Bald or Not to Be Bald : That Is the Question, by Todd Greene, The Huffington Post, The Blog, 10.25.2010.
*2 WebMD
*3 海外ではアメリカで、元ガン患者のシャロン・ブリンさんが始めた"Bald is beautiful"キャンペーンがある。ガン治療で髪を失っても、自信や尊厳を失うことなく美しく生きられる、という信条を広める活動だ。この信条が、日本も含めて世界的に浸透すればいいなと思う。ただ、現状は男性の坊主頭さえ日本ではまだ市民権を得始めた段階だ。
*4 板見 智「日本人成人男性における毛髪(男性型脱毛)に関する意識調査」日本医事新報、2004年
*5 板見 智『専門医が語る 毛髪科学最前線』集英社新書、2009年
福本容子(ふくもと・ようこ)
毎日新聞論説委員(経済担当)。1987年、毎日新聞社入社。英文毎日編集部記者などを経て、毎日新聞経済部。通商問題、金融、エネルギー、素材・製薬業界などを担当後、2001年より欧州特派員(ロンドン)。欧州通貨統合やWTO(世界貿易機関)交渉、OPEC(石油輸出国機構)交渉などカバーする。2008年より現職。早稲田大学教育学部英語英文学科卒、マサチューセッツ工科大学(MIT)修士課程修了。コメンテーターとして、TBS系「ひるおび!」、同「新・情報7daysニュースキャスター」、毎日放送MBSラジオ「こんちわコンちゃんお昼ですょ!」などに出演中。熊本県出身。

著者:福本容子
なぜ世界でいま、「ハゲ」がクールなのか
(講談社、税込み 907円)

カリスマCEOから、イカした政治家、スターまで、「ボウズスタイル」が潔い!
欧米一流紙、ファッション誌が激賞。「影響力あるハゲ」が世界をリードする!

amazonこちらをご覧ください。

楽天ブックスこちらをご覧ください。