海外で目にした「ハゲ」のブランド力! 「気に病む」日本人男性800万人のステータスを変えられるか

『なぜ世界でいま、「ハゲ」がクールなのか』第1回
パスカル・ラミー氏(イラスト:西田真魚)

ラミーさんは多分、私が初めてそう思った人である(映画俳優など除き)。背がすらっとしていて、ジョギングやサイクリングが日課とあってか、スタイルがいい。何と言っても、髪のない頭と強い目力から、オーラが発散されていた。映画『スター・トレック』に出てくるUSSエンタープライズの艦長、ジャン=リュック・ピカードのイメージだ。

タフ・ネゴシエーターとして知られる。それはそうだろう。通商担当の欧州委員という仕事は、まず欧州連合(EU)の中で、二十何ヵ国という、どれも個性の強い加盟国の利害をうまく調整しなければいけない。そして、その代表として今度は世界の利害が対立する国々と交渉だ。タフでなければ務まらない。

同時に、未明まで続くような厳しい交渉の合間をぬって、日々思ったことを日記風につづりながらインターネットで発信したりもしていた(当時はフェイスブックもツイッターもなかった)。朝のジョギングのことなんかも書いたりする、ちょっとお茶目な横顔もあった。

私は2001年4月から4年間、主にヨーロッパ経済のことを毎日新聞に書くため、ロンドンに駐在していた。その間、貿易問題などについて何度かラミーさんにインタビューさせてもらったことがある。

ラミーさんのオフィスは、ベルギーの首都ブリュッセルにある、EU版霞が関の巨大役所にあった。ある時、欧州委員会のビルに入り、エレベーターから降りたところで、ちょうど登庁してきたラミーさんといっしょになった。手には、テイクアウトのコーヒー。そしてハンチング帽がキマっていた。髪の毛がないから余計にキマっていた。

フランス人らしいと言えばそれまでだけど、颯爽とした空気をまとい、およそ「大臣」という言葉からイメージされる姿ではなかった。東京の霞が関で、中央官庁の幹部が朝、ハンチング帽、手にはコーヒー、のスタイルで登庁することはまずない。

さて、ラミーさんは例外なのだろうか。

ラミーさん以外の男性、それも日本人で、ツルツルのハゲという人は、魅力的じゃないのだろうか。

そんなことは絶対にない。

これがこの本の短い結論だ。

世の中には、自分(たち)が思い込んでいることと、自分(たち)以外が感じていることが、実は全然違ったんだよね、という場合が結構たくさんある。

まさに「ハゲ」はその一つだ。

ハゲの条件

「自分(たち)」と、あえて(たち)を入れたのは、ハゲの場合に限らず「男の人たち」「女の人たち」といった集団全体として、大いに勘違いをしていることがあるからだ。例えば女子はネイルに相当な時間とお金と労力を費やし、「カワイイー」と喜んでいるけれど、男性からはその投資に見合った評価をされないのが普通だ。むしろやりすぎて反対に引かれてしまう、大いなる逆効果の現実もある(もちろん、女子がみんな男子にもてたくてネイルをキラキラにしているわけじゃないけれど)。

女性が意識しすぎる「太っている」もそう。男性はある程度ふっくらした女性が好きだったりするのに、女性は(特に日本人女性は)、他人が思っているのより自分は2サイズぐらい太めに見られていると思って悩んだりする。そしてナントカダイエットにお金をかけたり、きちんとした食事をしなかったりで、体や心に変調をきたす人もいる。もったいないことだ。

男性のハゲも同じ。

ただ、ハゲにもよる。? どういうことなのか、この先、ちょっと探っていきたい。