櫻井秀勲 第4回 「『ツイッギーヲサガセ』とだけ書かれた謎の至急電報」

島地 勝彦 プロフィール

櫻井 そのとき彼女が「いまイタリアの若い女性の間ではロンドンのツイッギーというモデルが大人気です。日本でも注目すべきですよ」と教えてくれたんです。正直いって、わたしは「ツイッギー」なんて聞いたこともありませんでした。とにかく編集部に伝えて調べさせようと思ったのですが、帰国間近で財布はすっからかん。そこで考えに考えていちばん短い文字数で至急電報を打ったんです。「ツイッギーヲサガセ」と。

ローマから届いた暗号めいた電文に編集部は「なんじゃこりゃ?」という感じだったそうです。実際、編集長を含めて誰も「ツイッギー」のことを知らなかったわけです。そこに1人だけ賢いやつがいて、「週刊朝日」の小さなコラムに彼女のことが載っていたのを覚えていたらしく、AP通信に走ったのでしょうね、わたしが帰国したらツイッギーの写真が2枚だけ用意されていました。

それをみたわたしは、彼女のソバカスをデザインした化粧が面白いと直感しまして、すぐに次号の表紙を彼女の写真に差し替えて「この女性は誰でしょう?」というクイズを出したんです。すると驚いたことに、2万人の読者がすでにツイッギーのことを知っていた。編集部よりも認知度が高かったんです。そこで翌週もツイッギーの写真をたくさん集めてきて表紙にしたら、売上が一気に10万部も増えて完売しました。

その翌週もツイッギーを表紙にしたらまた完売。そこで彼女を東京に呼んで、東レと合同でファッションショーをやったんです。それからは毎号ツイッギーが表紙でしたね。もう完全に「女性自身」が独占状態なので、ツイッギーの専属契約をしている事務所みたいに思われたようで、「彼女をうちの広告を出したいんですが」とみんなわたしにお伺いを立てにくる始末でした。結果的に、ツイッギーには広告関連で年間1億円は入っていたと思います。

セオ それではツイッギーと櫻井先生はWin-Winの関係だったのですね。

櫻井 はい。わたしの首が飛ばずに済んだのは彼女のお蔭です。

シマジ 運というのは不思議なものですね。その"ご苦労さん旅行"がなかったら、また「グラツィア」の編集長に予定通り会っていたら、ツイッギーの話題など出なかったかもしれない。「女性自身」は相変わらず他誌と一緒にダンゴ状態で低迷していたかもしれないんですからね。

櫻井 そうですね。売れない物書きになっていたでしょうね。