「どうしてもNPOで働きたかった」---監査法人からCFOとしてNPOに出向する意義とは?

安藤 光展

インパクトの最大化が、今後のキーポイント

安藤:ほかにも御社ではCSR活動をしていらっしゃると思うのですが、Facebookページで、大学生向けのキャリア教育も拝見しました。あの取り組みは常時しているのですか?

五十嵐:近年、専門スキルを活かしたCSR活動に注力しつつあり、大学生向けでいえば、大学の寄付講座のような形で、会計や財務の話をしたりもしますし、オフィスに職場訪問として学生を受け入れたりもします。先日も中学生が来ていました。職場の空気感も体感できますし、とても有意義な活動だとは思うのですが、まだ法人の内外ともに認知度は十分ではありません。

私もせっかく監査法人からNPOに出向というユニークな取り組みをさせてもらっているのですが、あまり対外的に知られていないというのは課題の一つです。法人内でも、私のまわりの人は知っていますけど、接点がない方はたぶん、私の取り組みを知らないと思います。

活動がよくても、誰も知らないのであれば、諸々の効果は半減してしまいます。もちろん、今回のインタビューを含めて可能な限り取材をお受けし、より多くの人たちにTeach For Japanやあらた監査法人の紹介ができればと考えています。

安藤:広報の情報拡散も重要ですし、活動そのもののインパクト最大化も重要になりそうですね。

五十嵐:インパクトという点で言えば、なぜ退職ではなく出向かというところにもつながります。例えば、退職して私一人でTeach For Japanに入ったとしても、団体の財務体制・財務体質がちょっと良くなった、というレベルで正直終わりそうな気がします。一人の会計士がボランティアしている、だけでは大きなインパクトは正直望めません。

インパクトを求めるのであれば、より多くの人を巻き込む必要があります。同僚ももちろんのこと、公認会計士業界の人たちもそうですし、日本全体でいえば、私の動きが先進事例として認知され、フォロワーといいますか、さまざまなNPOと民間企業がもっとつながればいいなと思っています。

それができるのは、パラレルキャリアといいますか、所属法人を巻き込んでNPOに出向という形だからこそできるという部分も大きいです。あらた監査法人のネームバリューもあるし、リソースも使えますし。もちろん、自分の希望を法人が受け入れてくれている分、何かしらの還元はすべきだし、できるよう努力しています。

安藤:さまざまなステークホルダーを巻き込んでこそ、インパクトを出せるし、ムーブメントに昇華できます。社内外でのネットワーキングもされているのですか?

五十嵐:所属団法人枠組み以外での活動範囲も徐々に広げています。例えば、2013年11月にPwC Japanにおいて Pro bono Networkのグループを立ち上げて、30人くらいの有志で勉強会をしています。

公認会計士のみでなく、コンサルタントも多数参加してくれています。「NPOとはなんぞや?」みたいな勉強会です。月一回、NPOに興味がある人が参加してくれています。NPOに興味がある人がまわりにも一定数いるんだなと実感しています。

また、法人の枠を超えた公認会計士を中心としたプロボノ勉強会もしています。今は知識や経験の共有だけですが、今後は体系化し資料としてまとめ、研修をしたり、会計のプロフェッショナルがNPO支援をできるスキーム作りをするのが目標の一つです。公認会計士のプロボノの仲間たちのおかげで少しずつ形になってきています。こういった輪を広げていければ、社会的にみてインパクトを出せるのではないかと感じています。

内外の多くの方々の協力があって、今の私の働き方があります。ただの「ユニークな新しい働き方」で終わらせることなく、しっかり所属法人にもNPOにも社会にもインパクト出していきたいと思っています。 

【取材協力: CSRビズ

執筆:安藤光展(あんどう・みつのぶ)
CSRコンサルタント/ブロガー。専門はCSR(企業の社会的責任)におけるコミュニケーションの戦略立案。社会貢献系ウェブメディアの運営支援から、CSR研修講師、CSR関連の書籍・コラム執筆など。6年目に突入した個人ブログ「CSRのその先へ」を運営。著書『この数字で世界経済のことが10倍わかる–経済のモノサシと社会のモノサシ』(技術評論社)ほか。