「どうしてもNPOで働きたかった」---監査法人からCFOとしてNPOに出向する意義とは?

安藤 光展

安藤:その過程で、出向という形もあると気付いたのですか?

五十嵐:そうなのです。休職しかないと思っていて、いろいろと調べていたら、このNPO支援って、個人としてではなく法人として行うことができるのでは? と思いついたのです。

NPOに出向するということが、法人にもメリットがあるということを論理立てて説明できれば、一番理想的な形を作れるかもしれない、と。つまり、あらた監査法人のCSR活動としてできるかもしれなくて、私の出向の活動自体が監査法人のCSR活動でもある、という形の可能性を感じたのです。

そこに気付いてから、さまざまなプロボノ関連の記事・書籍を読みあさり、法人内に提案するプレゼンテーション資料を作り、人材をNPOに送り込むことによる監査法人や公認会計士業界へのメリットについてさまざまな方に提案していきました。

例えば、出向者視点でいえば「自己成長がある」という部分は、法人側からすれば「人材育成効果がある」といえます。また、CSR活動としてNPOの財務面を支援するという活動で、社会貢献性の高い監査法人であると社会から認識していただけるようになるのではないか、と。

事実、マネジメントも理解を示してくれていますし、PwC Japan(*2)には東北イノベーション推進室という東日本大震災被災地の企業や自治体などの支援をおこなっているチームもあり、社会貢献活動に非常に理解があると思います。

加えて、NPO支援は、第三者ステークホルダーからの「社会的な要請である」ということもあります。そもそもNPOの場合、財務のプロがいない場合がほとんどです。NPO法人会計基準制度の認知度が低いとか、さまざまな理由がありますが、我々であれば、そういう部分も支援できるのです。

ですので、監査法人として、そういった意義のある活動をしているNPOの課題解決に貢献することで、専門スキルを使った我々にしかできない社会貢献の形があるのではないかと考えました。

(*2)PwC Japanは、あらた監査法人、京都監査法人、プライスウォーターハウスクーパース株式会社、税理士法人プライスウォーターハウスクーパース、およびそれらの関連会社の総称。
NPO法人Teach For Japan ウェブサイト

就職先人気ランキングでGoogleやAppleを抑えて1位になったNPO

安藤:素晴らしいです。どの民間企業でもできるという支援ではないですね。それらの提案で、「なぜ対象NPOがTeach For Japanなんだ?」という話は出てこなかったのですか?

五十嵐:もちろんNPO選定理由も含めて提案しました。例えば、世界30ヵ国以上で同様の取り組みを行うグローバルネットワーク「Teach For All」があり、教育課題をグローバルな課題と捉え、グローバルなアプローチで解決しようとしている点も強調しました。

また、イギリスにはTeach FirstというTeach For Japanと同じくグローバルネットワークTeach For Allに加盟し、同様の教育プログラムを行うNPOがあるのですが、Teach Firstはすでにさまざまな形でPwCの英国法人と提携していることも紹介しました。海外の事例もありますし、グローバルネットワークをお互いに活かして、PwC JapanもTeach For Japanと提携した取組みができるのではないか、と提案したのです。

ご存知かもしれませんが、同様の取り組みを行うアメリカのNPOであるTeach For Americaは、2010年の全米文系学生・就職先人気ランキングで、GoogleやAppleを抑えて1位となった団体です。ハーバード大学の20%近くの卒業生がTeach For Americaに応募していると言われ、世界のトップクラスの人材が、集まる団体となっています。

つまり、その国で最も優秀で情熱のある人材が集まるNPOなのです。これはアメリカだけではなく、イギリスでも同様のムーブメントが起こっています。こういったグローバルなムーブメントを日本でも起こし、その国で最も優秀で情熱ある人材が教育課題の解決に全力を尽くす社会にしていきたいと思っています。

教育は国創りの根幹です。そのために私たちにもできることがあるのではないかということを説明し、本業を活かした社会貢献活動としてTeach For Japanの支援を提案しました。提案の際には、Teach For Allの職員にも日本に来てもらい、同行していただきました。