「どうしてもNPOで働きたかった」---監査法人からCFOとしてNPOに出向する意義とは?

安藤 光展

前例がなかった、NPOへのフルタイム出向

安藤:まずはご経歴からお聞かせ下さい。

五十嵐剛志さん(以下、五十嵐):大学を卒業し、あらた監査法人の財務報告アドバイザリー部に新卒で入りました。プロボノ活動は2013年6月から個人としておこなっておりまして、正式な出向が決まり、業務を始めたのが今年の1月からです。

個人的な想いとして、以前からNPO支援をしたいと思っていました。関連書籍を読みあさり、NPOの方の講演やセミナーに積極的に参加していました。もちろん、今回出向することになったTeach For Japanのイベントにも何度か足を運びました。そこで団体の活動に大変感銘を受けまして、少人数の講演の時に、代表の松田さんに「何かお手伝いできることはありませんか」と、声をかけたのです。

そうしたら「あなたは何が得意ですか?」と聞かれ、「監査法人に勤める公認会計士で会計分野が得意です」と話したら、ちょうど会計業務関連で困っているということだったのです。まさにちょうど良いタイミングでした。そんな偶然のきっかけから、事務局のサポートメンバーとして土日を中心として支援活動を始めました。

安藤:個人のプロボノ期間を含めて、1年くらい経ちますが、まわりの反応はどうですか?

五十嵐:所属法人側からもNPO側からも、おかげさまで良い反応をいただけているのではないかと思います。ただ、この仕組みで出向しているのが、所属法人で私1人だけの先駆的な取り組みであり、前例がないため、制度運用面で手探りの部分が多いです。

最終的に出向という形態になりましたが、人事や法務の部門などとも相談し、ほかにもいくつかの契約形態を考えていただきましたし、法的な問題などもあり、さまざまな検討をしました。最終的にはCEOをはじめとするマネジメントの許可も取ることができ、とても熱心に応援してくれています。また、さまざまな方に相談に乗っていただき、多くの方のご理解に感謝をしています。

「NPOで働きたいので、退職も考えました」

安藤:企業からNPOへの長期出向の事例はなくはないのですが、全体からすればとても珍しい就業形態です。監査法人のNPO出向は初めて聞きました。

五十嵐:実際のところ、出向という形態に辿り着くまでにさまざまな模索をしていて、当初は今の形態は無理だと思っていました。せっかく関われたということもありますし、平日も含めたフルタイムのコミットメントで業務に関わりたいと思い始めるのに時間はかかりませんでした。

そこで、現行の制度で利用できるものは活用したいと思い、休職を含めた特別な休暇利用、ボランティア休暇を含めて、長期間利用できる社内制度を本気で検討するようになりました。

人事部門にも相談して、検討したのですが、休暇の長さでいうと最大で3ヵ月なので、これらの制度利用では、短いと思いました。本気でコミットしたかったので、少なくとも1年は欲しいなと思い、当初は休職か退職という2択しかありませんでした。公認会計士は専門職ですので、戻ろうと思えばいつでも戻れるから休職にしようと考えていました。