連載「男のパスタ道」第3回
パスタをおいしくする「ゆで方と塩の入れ方」3つの正解

パスタをゆでるとき、塩をどれだけ入れるか? 3つの正解

さて、じゃあ、どんなふうにパスタをゆでるのが正解なのか。『男のパスタ道』のなかでは、水の量、パスタと塩の銘柄を指定し、私なりの明確な答えを事細かに示したが、それはあくまで「アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ」というパスタ料理のためのゆで方であり、また、使用するパスタの特徴との関係を考慮したうえでのもの。そこでここでは、より普遍的な3つの答えを示す。これらは、いわば「化学的な味」と「物理的な味」のトレードオフの落としどころである。

1. 水1リットルに対し、塩25〜30グラムを入れてゆでる。

「化学的な味」としては、かなりしょっぱいが、パスタには弾力があり、食感は素晴らしい。例えば暑い夏、汗をたっぷり書いた後、ペペロンチーノを作って、白ワインをがぶ飲みしながら食べるのであれば、最高のゆで方だろう。塩の量が40グラムになるとさすがにしょっぱすぎて、食べるのに苦労する。

2.アルケッチャーノの奥田シェフのように別鍋に真水を沸かしておき、水1リットルに対し、塩25〜30gを入れてゆでる。ゆであがったら、沸騰した真水でパスタを洗う。

これはプリプリの食感を残したまま、塩味を薄くする手法。「化学的な味」と「物理的な味」のぶつかり合いを見事に止揚する。当然ガス代などがよけいにかかり、手間も増える。はっきり言えば面倒くさい。そこで、例えば、来客時、食べ手に絶対おいしいと言わせたいときになど、ハレの舞台で活用するのがいいと思われる。

3.水1リットルに対して、塩8〜10グラムを入れてゆでる。

1のゆで方とは対照的に、こちらは「物理的な味」の向上を捨て、「化学的な味」のほどよさを選んだゆで方。もともとコシの強いパスタ銘柄を選べば、食感についてもフォローできる。

また、このゆで方の利点は、ゆで汁を味付けに使う場合に最適な塩分濃度になっていることだ。イタリア料理店の多くがこの濃度でパスタをゆでているのは、ゆで汁を料理の味付けに使う機会が多いからではないかと思っている。尚、よくパスタのパッケージに書かれている水1リットルに対して小さじ1(約6グラム)では、味は薄すぎる。

以上が私の結論だが、「化学的な味」と「物理的な味」のトレードオフの関係を理解すれば、もしかしたら別の落としどころも見いだせるかもしれない。「他にもっといいゆで方があるよ」という方がいたらぜひ教えていただきたい。

『男のパスタ道』(本体850円)


なお、連載第1回で書いたように、パスタのゆで方については、さまざまな言説がネット上に氾濫している。

「沸騰するのに時間がかかるから、塩は水が沸騰してから入れろ」

「塩は岩塩を使え」

「塩を入れると沸点が上がってコシが出る」

「塩水でゆでると塩析という現象でパスタのタンパク質が固まる」

「パスタに塩を入れないでゆでると浸透圧の関係でソースが水っぽくなる」

さて、これはすべて正しいのか?

明日、連載第4回で、お答えしたい。

土屋敦(つちや・あつし) 料理研究家、ライター。1966年東京都生まれ。慶應大学経済学部卒業。出版社で週刊誌編 集ののち寿退社。京都での主夫生活を経て中米各国に滞在、ホンジュラスで災害支援NGOを立ち上げる。その後佐渡島で半農生活を送りつつ、情報サイト・ オールアバウトの「男の料理」ガイドを務め、雑誌等の書評執筆開始。現在は山梨の仕事場で畑仕事をしながら執筆活動を行う他、書評サイトHONZの編集 長。自称「書斎派パスタ求道者」。著書に『なんたって、豚の角煮』(だいわ文庫)他。近著『男のパスタ道』(日経プレミアシリーズ)が革命的(あるいは偏執的)レシピ本として各メディアで評判に