連載「男のパスタ道」第3回
パスタをおいしくする「ゆで方と塩の入れ方」3つの正解

ゆで汁にどれぐらい塩を入れるか

さて、前回解説したアルデンテについてと、ここまでのコシについての説明をふまえたうえで、今一度パスタのゆで汁に塩をどれぐらい入れるべきか、考えてみよう。

この連載の第1回で紹介した、オールアバウトの私の記事では、食感については、ゆで汁に塩を入れなくても、1パーセント程度の塩水でゆでても、違いは見いだせなかった。さらに、プレジデントオンラインで東京家政大学の長尾慶子教授による「スパゲティをゆでるときは塩なしでOKです」という記事が出て、こちらにも塩が食感に影響しないと書いてあった。

当時、私は、塩はパスタに塩味をつけるためのもので(長尾教授とは違い、味付けの意味でパスタのゆで汁に塩を加えるべきだと考えていた)、食感にはさしたる影響はないと思っていたが、しかし同時に、果たして本当にそうなのか、という疑念を抱えてもいた。

その理由のひとつが、私自身がライターとして関わっていた雑誌「男子食堂」(ベストセラーズ)の「パスタ特集号」(2011年7月号)の記事だった。他のシェフたちがだいたい1%前後の塩水でパスタをゆでているなか、山形の名店・アルケッチァーノの奥田政行シェフだけが、濃い塩水でパスタをゆで、さらに別鍋に沸かしたお湯で洗って塩分を落としてから供する、という手法も採っていたのだ。加えて、イタリア人の知人が作った、塩をたっぷり入れたゆで汁でゆでられたパスタが、実にプリプリとしていたことも頭にひっかかっていた(味はすごくしょっぱかったが)。

それもあって、『男のパスタ道』の執筆を開始した当初から、さまざまな濃度の塩水でパスタをゆでる実験を繰り返していたのだが、そんな折、タイミングよく、パスタのゆで方を取り上げたテレビ番組が放映された。「うまっ!次世代パスタ」と題されたNHK「ためしてガッテン」の2013年10月09日放送分である。この番組はパスタ好きの間でも話題になったので見た方もいるかもしれないが、番組内では、機械でも測定したうえで、真水でゆでたパスタと約0.6パーセントの食塩水でゆでたパスタの歯ごたえにはほとんど差がない、と結論づけていた。この約0.6パーセントの食塩水というのは、日本でメジャーなパスタのパッケージによく書かれている「1リットルの小さじ1杯の塩」を入れたものだ。これは、私の実験や長尾教授の結論とほぼ同じと言えるだろう。

しかし、「ためしてガッテン」では、真水と0.6パーセント食塩水では、パスタに差が出ないとしながらも、アルケッチァーノの奥田シェフのゆで方を引用しつつ、2.5パーセント程度の食塩水でゆでると歯ごたえが非常によくなる、ともしていたのだ。番組では、この方法で歯ごたえがよくなる理由を、濃い食塩水でゆでると糊化が遅くなるからだとしていた。これは、前回紹介した、私の実験結果とも一致する。

しかし、ゆで汁の塩分濃度とグルテンとの関わりの記述はなかった。そこで、冒頭に書いた手法で取り出したグルテンを使って比較してみた結果が以下である。