連載「男のパスタ道」第3回
パスタをおいしくする「ゆで方と塩の入れ方」3つの正解

もう少しくわしく説明すると、グルテンを構成するグルテニンはアミノ酸でできているが、アミノ酸には水と結びつきやすい親水性のものと、逆に水とは混ざりにくい疎水性のものがある。分子同士を結びつけやすいのは疎水性のアミノ酸だが、それらは普段は分子の内部に埋もれている。しかし、加熱によって水分子が振動すると、分子の構造が崩れて疎水性アミノ酸が表面に露出し、分子同士が結びついてグルテンが硬くなるのだ。

パスタがゆであがったかどうかを判断するやり方として、鍋からパスタを1本取り出して親指と人差し指でつまんでみる、というのがある。力を入れたときにネチッとつぶれるような感じだと、まだゆでが足りない。力を入れたときにプチッと切れるようになったら、ちょうどよいゆであがりだ。

ゆであがるまでのネチッとつぶれるような感触は、デンプン由来のものだ。それが時間とともにグルテンの弾力が増すことによって、プツンと切れるようになるのである。

パスタの「アルデンテ」と「コシ」は違う

さて、これをふまえて、ゆでたパスタの食感を4つに分けてみる。

1 パスタ表面の食感(パスタを作るときの表面加工技術によって変わる。またパスタ表面のデンプン粒が糊化し、水中へと崩壊する過程でできた薄い糊のようなものを麺がまとうことで、ぬめりのある食感が生まれる)。

2 噛んだときに押し返すような弾力をもちつつも、歯にネッチリと粘りついてくる食感(糊化して水を吸ったデンプン粒の食感。含水率は中心にいくほど減るので、その弾力と粘りも平板な感じではない)。

3 パスタ中心部に残ったポリポリと硬い芯を、歯で折り、噛んでつぶすような食感(含水率40パーセント以下の、糊化していないデンプン粒が生み出すアルデンテの食感)。

4 噛んだときに弾力がありつつも、力を入れるとプツンと切れるような食感(水を吸ったグルテンが加熱で硬くなることで生まれる)。

1から3まではデンプン、4はタンパク質=グルテンがもたらす食感である。1の食感は、麺が唇や舌、口腔内に触れるときは「ツルツル感」とでもいうべきものとなり、また飲み込むときには、「のどごし」となる。ただし、パスタの製法によってこの感触は変わり、また、ゆであげたパスタをそのまま食べない限り、オイルやソースの食感と一体化してしまうので、直接この食感を感じることはない。また、パスタが乾いてしまうとこの食感はベタつきとなり、ゆであげたパスタがくっつく原因にもなる。

そして、すでにこの連載の第2回でくわしく見たように、3の食感がアルデンテだ。

さらに、パスタのみならず、うどんやラーメンなど、小麦で作られた麺全般について、噛んだときに感じられる弾力を「コシ」という言葉で表現することがあるが、このコシにあたるのが、2と4の食感が合わさったものだろう。

アルデンテとコシについては、両者を混同した記述もよく見られるが(私も本書を書くまで、ずいぶんと混同していた)、少なくとも私の本『男のパスタ道』では、このように定義することで区別している。アルデンテとコシは、まったく違う概念なのである。