
米軍の戦術はアウトレンジが基本
---まず、金。その次の理由は何が来ますか?
撤退する二つ目の理由が、スタンドオフです。
---なんですか、それは?
敵の先制攻撃圏外にいることです。
米軍は、中国から先制攻撃された時に、被害を最小限に食い止めるために日本から離れ、十分で安全なスタンドオフ距離を保つ必要性があります。
---この第2の理由は、在日米軍が撤退する理由としては強いですね。米軍に金が足りなかったら、日本は幾らでも払いますからね。
その米軍が、スタンドオフして、アウトレンジにいる、即ち、敵の先制攻撃の圏外にいる戦法を取り始めたのは、いつからですか?
湾岸戦争です。この戦争で、エアランドバトルが初めて行われました。空から攻撃して、その後に陸上兵力が行けば、損害がほとんどないことが分かりました。
しかし、逆に空からやられると陸上兵力はヤバいことも分かりました。

著者= 飯柴智亮 / 聞き手・小峯隆生
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---米国が学んだのは、圧倒的な制空権があれば、陸軍の被害は少ない。しかし、逆に空からやられる場所にいれば、第一撃からは逃げられないということですね。
そうです。自分も米陸軍にいた時、空からの攻撃はほとんど、想定していませんでした。ADA(Air Defense Artillery:対空戦闘)はどうしていいか、分からない。だからこそ、ヤバいのです。
米軍は、空から攻撃される位置に陸上兵力および海上兵力を置くことはないのです。その結果、海兵隊は、沖縄からグアムに下がり始めました。
---冷戦時代、ソ連が日本に侵攻した時、自衛隊が応戦して耐える。そこに、沖縄駐留の米海兵隊とハワイの米陸軍第25歩兵師団が来るまで、持ち堪えるのが基本戦術でした。今、それが中国軍となって、日本上空で中国空軍が制空権を持っていたら、米軍はどうしますか?
米軍は陸上兵力を絶対投入しません。
---米陸軍も米海兵隊も来ない。
間違いなく来ません。後回しです。というか、そもそも来る場所がありません。エアシーバトルでは、陸上兵力は下げます。だから、撤退というより、正確にはリスクの分散です。