空気と水のようにずっとそこにあると思われている在日米軍。
しかし、それはまったくの勘違い。なぜなら米国は民主主義の国であるとともに資本主義の国でもあるからだ。その判断は、まずは国民の民意に基づくが、さらには経済原則に基づいても合理的に下されるのだ。
即ち、必要か不要か---合理的に判断が下されれば、動くしかない。
米軍は、敗戦でベトナムから撤退し、同時にタイからも撤退。金銭問題で、フィリピンから撤収。湾岸戦争が終われば、サウジアラビアから引いた。イラク戦争が終われば、全面撤退した。
東アジア---朝鮮戦争はあくまで休戦中のため、韓国に米軍は駐留し続けている。太平洋戦争で日本に勝利した米軍は、日米同盟の下、日本に駐留してきたが、戦況が変われば、米軍は動く。
そして今、東アジアの戦況は日々刻々と動き始めた。在日米軍は完全撤退も視野に入れ、すでに一部では撤退を開始している。
そうした動きの中で、今、日米同盟は、「同床異夢」---同じ床に寝ながら、異なる夢を見ているのではないか。まるで熟年離婚のような雰囲気になっていると、飯柴氏は指摘するのだ。
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---まずは、「日米同盟」の存在理由についてお聞かせください。
冷戦時代は、日米は西側のプレイヤー同士、きちんと意思統一がなされていたと思います。
---今は違うのですか?
当時は、日米だけではなく、西ドイツ、イギリスにしても、米ソ全面核戦争の脅威の下ではみなが運命共同体でした。
---核戦争が始まれば、西側はほぼ同時に滅亡する?
そうです。その恐怖を西側諸国全体で共有していたと言えるでしょう。
冷戦下の1986年に、東京で開催されたサミットの報道写真を見ても、7人の首脳がズラリと並んで、その表情は緊張感に満ち満ちていました。
---当時、自分は週刊誌編集者として、関連特集の取材をしていましたけれど、レーガン米国大統領、サッチャー・イギリス首相・・・と、まさにオールスター級の西側指導者が集まっていました。
今、思えば歴史的な顔ぶれでしたね。
---その共通の敵としての、共産主義・ソ連と東側がなくなった・・・。
今、中国が次の敵として現れたけれども、実は日米は同床異夢になっているというしかない。
---日米はそれぞれが、どんな異なる夢を見ているのですか?
結論から言いますと、日米間の国益の差ですね。冷戦終了直後からその差がどんどんと広がって大きくなっています。
例えば、北朝鮮のミサイルが、1000発以上あって、日本を崩壊させることができるとしてもですね、米国にとっては、「北のミサイルはウチに届かないから、関係ない」ということになります。
---そんな冷酷な・・・。
だから、日米同盟は同床異夢、というんです。
さらに言えば、中国のミサイルも米国に到達するのは、100発前後です。米国はやる気になれば、中国に数千発単位の核ミサイルを叩き込めますから。
だから正直、「中国も関係ないから」というスタンスです。