櫻井秀勲 第3回 「女性と偉い男性に会う時は、相手の前で時計を見るのは禁物です」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ タッチャン、お言葉ですがそれは「人生は運と縁とセンスである」と書いたんだよ。メガネをそろそろ買い替えたほうがいいね。老眼が進んでいるんだよ。でも「運と縁とセックス」のほうがユーモアがあっていいかもしれないな。

セオ たしかにそのほうがシマジさんらしいですね。

シマジ おれの話はもういい。メルマガにすべてを赤裸々に書いているからね。ところで櫻井さん、光文社の名物社長の神吉さんという方はどういう人物だったんですか?

櫻井 神吉さんはわたしの大恩人です。若者の才能を見抜くのがうまい人でした。あれだけいる社員のなかで、伊賀君、藤岡君、カッパ・ブックスの長瀬君、そしてわたしと4人の才能を見い出してくれました。そういう意味でも鋭かったですね。わたしを38歳で役員に抜擢したんですから、それだけでも凄い決断だと思いますし、また育ててやろういう気持ちも感じられました。

シマジ たしかに、凡庸な社長は凡庸な役員しか作れませんからね。

櫻井 当時、まだ若いわたしを当時のフジテレビの鹿内信隆社長社長と神吉さんの連絡係に抜擢してくれて、神吉さんの代わりによくフジテレビに行きました。若いときに偉い人と会うチャンスを与えてくれた神吉さんは立派な社長だと思います。それから、用事が出来て予約していた店に行けなくなったときなんかにも「櫻井、おれの代わりに行ってこい」と自由に使わせてくれました。

シマジ 一見ではそう簡単に高級店には行けませんものね。

櫻井 お座敷天ぷらの「天政」とか、料亭の「吉兆」とか、神吉さんの代わりでよく行かせてもらいました。「吉兆」なんて自分では入れませんからね。

シマジ いい店と馴染みになっていることは編集者の武器ですから、それは後年役にたったでしょう。「天政」はわたしも本郷さんから「シマジに教えておくから、立派な人と会う時に使いなさい」と紹介していただきました。驚いたことに、天政の先代のオヤジは本郷さんのことを畏まって「先生、先生」と呼んでいました。

セオ いくら本郷さんが偉い人でも、編集者を先生と呼ぶのは変ですね。

シマジ セオ、珍しく鋭い質問だな。おれもはじめはそう思ったんだが、オヤジの話を聞いて納得したんだよ。じつは「天政」のオヤジは戦前、本郷家に御用聞きとして出入りしていた。まあ、一心太助みたいなことをやっていたわけだ。一方、当時の本郷さんは「主婦の友」を100万部売っている大編集長だったから、自然な流れで「先生」と呼ばれていたようだ。雑誌が少ない時代だったから、そもそも編集長の値打ちがちがったんだよ。