櫻井秀勲 第3回 「女性と偉い男性に会う時は、相手の前で時計を見るのは禁物です」

島地 勝彦 プロフィール

櫻井 シマジさんも集英社を辞めようと思ったことがあるんですか?

シマジ はい。47歳のころですかね、若気の至りで若菜社長に辞表を持って行ったことがありました。

櫻井 受け取ってもらえなかったでしょう。

シマジ そうなんです。まったく相手にされませんでした。

櫻井 それは若菜さんがシマジさんの才能を認めていたからですよ。

シマジ わたしが集英社で傍若無人にやっていられたのは若菜さんの後ろ楯があったおかげだとつくづく感謝しています。

立木 シマジ、若菜さんの墓参りには行っているんだろうな。

シマジ 毎年命日の近くに行っているよ。お線香の代わりにお墓の前で葉巻を吸って3分の1くらいを置いてくるんだ。

立木 来年からはお線香にしろ。

シマジ いや、葉巻のほうがおれがきたとわかってもらえていいと思うよ。じつは先日、伊勢丹のサロン・ド・シマジに若菜さんのお嬢さんがきてくれたんです。はじめてお会いしたんですが、お話をうかがうと、若菜さんは一家団欒のなかで「うちにシマジっていう面白い編集者がいてな」とよくわたしのことを話題にしてくれていたそうです。

朝日新聞にわたしを取材した連載記事が載ったときに、たまたま彼女のご主人がそれをみつけて「これ、パパがよく話していた方じゃない?」と教えてくれたそうで、お嬢さん自らわたしにじかあたりしにきてくれたんです。若いときはサントリーに勤めていらして、いまは華道の先生をなさっているそうで、美しいお花を花瓶ごと持ってきてくれました。

セオ ぼくもそのお花を拝見しました。会ったこともない若菜さんのお嬢さんがバーにいらしたというのは、シマジさんの人徳かもしれませんね。

立木 セオ、それはちょっと褒めすぎじゃないか。この間こいつが自分の新刊にサインをするのを見ていたら「人生は運と縁とセックスである」なんて書いているんだよ。シマジには人徳なんて、これっぽっちもない。