スコットランドの住民投票を取材し、世論が反映される民主主義のヒントを探る---ジャーナリスト・大芝健太郎氏に聞く

佐藤 慶一 プロフィール
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情報を吟味し、議論をおこない、一人ひとりが将来を決める 

東日本大震災が発生し、原発の問題はもちろん、知り合いの福島の農家の方々が移住を余儀なくされた。「食の安全性をはじめ、原発が生きることをこれほどまでに揺るがすのかと思った」と大芝氏。「世論は再稼働反対という流れだったが、政治家はそれに反対していた。そのとき、民意が届いていない感じ、政治と市民の関係に疑問をもった」ことで、政治や選挙に対する関心が強まった。

2011年12月には、『原発』都民投票という署名活動が実施された。請求に必要とされる有権者数の50分の1(約21万人)を超える32万3076筆もの署名が集まったことでも知られる。このとき、住民の発意によって、行政・自治体に一定の行動を取らせる「直接請求」という方法に関心をもった。大芝氏は、このことをきっかけに、大阪や新潟など全国各地の市民投票を手伝い、取材をおこなうようになる。

2012年10月には、いっしょに活動していたメンバーらとリトアニアへ飛んだ(その後、ドイツ、ブルガリア、スイスなども取材)。「原発」国民投票があったからだ。現地で話を聞くなかで、日本では国民投票をおこなったことがないと言うと、「なんで?」という返答ばかり。リトアニアでは2年に1度ほどのペース、スイスでも年に4回、国民投票が実施されており、それが当然となっていることに日本とのギャップを感じたという。

「そういう国に行けば行くほど、国民が声を上げるシステムが日本にはないんだなと実感した。ヨーロッパにおける住民投票(国民投票)を軸とした、世論が反映される民主主義のしくみづくりに関心をもつようになった」(大芝氏)

その流れで、今回のスコットランドの住民投票の取材を実施するとのことだが、いつもの住民投票とは少し違う。一つは、「独立」するかどうか、という重大なテーマであること。市民一人ひとりにかかわるトピックのため、多くの情報が公開され、その情報を吟味し、盛んな議論がおこなわれている。

加えて、「民主的な独立の可能性」を示す事例になりうること。歴史上、戦争をはじめ、制圧や内戦を余儀なくされた独立が多かったが、今回の住民投票についてはイギリス政府も認めている。つまり、非常に民主的な独立のあり方になるかもしれないのだ。

また、住民投票の可能性についても伺った。日本においては、衆議院選挙の小選挙区では1位しか当選しないため、死票も多く、一票の格差の問題もある。そもそも政治家がどんな人なのか、公約の実現性も分からないまま投票することもある。住民投票であれば、生活に密接したテーマで、結果もわかりやすい。公開される情報も多く、その選別能力や政治のリテラシーは問われるものの、市民の手で将来を決めることが可能になる。