特別連載 平成版・南蛮阿房列車 「鉄道の世界遺産」をめぐる旅 第3回 「家族で楽しむキュランダ高原鉄道」(オーストラリア)

小牟田 哲彦
高原を走るケアンズ行き列車

ゴールドクラスの車内では、専属乗務員が赤と白のワインボトルを持ってしばしば客席に来て、空になったグラスにおかわりを注いでくれる。私は暑さも手伝って、冷えた白ワインを何杯も飲んだ。アルコール類が無料という車内サービスは、酒を飲むこと自体を売りにする列車を除けば、世界中の観光列車の中でも珍しい。ドライフルーツやクラッカー、チーズなどもどっさり用意されていて、ついつい手が伸びる。

乗車料金が一般客車の2倍もするせいか、ゴールドクラスの旅客は比較的年齢層が高く、子供が走り回ったりしないので、車内の空気が落ち着いている。私たちだって、1歳の娘が無賃でなかったらゴールドクラスには乗っていない。大渓谷のパノラマを前に停車中の客車内は時間の流れまでが止まったように静かで、ワイングラスを片手にクラッカーを食べる自分の咀嚼の音がよく聞こえる。

本編の続きは、7月18日発売『世界の鉄道紀行』をご覧ください

15時46分、渓谷にディーゼル機関車の警笛が響き渡ると、ホームの乗客たちがそれぞれの客車に戻る。そして、2度目の警笛と同時に、再びケアンズに向けて動き出した。

列車はその後も鬱蒼とした森の中を右へ左へと蛇行していく。やがて16時12分、左前方に沿線最大の見どころとされるストーニークリーク橋とそのそばの岩壁を流れ落ちる滝が見えてきた(この旅の続きは、『世界の鉄道紀行』の紙上でお楽しみください)。

 

小牟田哲彦(こむた・てつひこ)
昭和50年東京生れ。早稲田大学法学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻修了。日本及び東アジアの近現代交通史や鉄道に関する研究・文芸活動を専門とし、紀行作品や論文を多数発表。平成7年には日本国内のJR線約2万キロを全線完乗。世界70ヵ国余りにおける鉄道乗車距離の総延長は8万キロを超える。主な著書に『鉄馬は走りたい―南北朝鮮分断鉄道に乗る』(草思社)、『全アジア航路を行く』(河出書房新社)、『去りゆく星空の夜行列車』(扶桑社)、『鉄道と国家―「我田引鉄」の近現代史』(講談社現代新書)など。日本文藝家協会会員。