特別連載 平成版・南蛮阿房列車 「鉄道の世界遺産」をめぐる旅 第3回 「家族で楽しむキュランダ高原鉄道」(オーストラリア)

小牟田 哲彦
ゴールドクラス車内でサービスのワインを注ぐ専属乗務員

着席するとすぐに、乗務員がドリンクサービスに来てくれる。歩き回って程良く汗をかいていた私たちは、冷たいスパークリングワインで乾杯した。娘は駅のホームに着いたときにはもうベビーカーの中でお昼寝タイムに入っていて、今は妻の膝の上で夢の世界へ行ってしまっている。

外装を茶色とクリームに塗り分けられた隣の一般客車を覗くと、ホーム側にのみ面した3人掛けのシートが向い合せに並べてあるだけ。もちろん飲料の無料サービスなどはない。窓を全開にして熱帯雨林の野趣を楽しむには、むしろ向いているかもしれない。ヴィクトリア調の我がゴールドクラス客車とは、全く別の世界の趣きである。定刻より2分早い15時28分、乗務員が客車のデッキに施錠すると、列車は静かにキュランダ駅を離れ、すぐに深い森の中に入る。ゴールドクラスの車内では、窓上のモニターにキュランダ鉄道の歴史解説ビデオが流れ始めた。

「ゴールドクラス客専用」の案内表示

ケアンズとキュランダを結ぶ鉄道は1891年、日本で言えば明治24年に開業した。もともとはアサートン台地と呼ばれるケアンズ南西の丘陵地帯から東海岸までの鉱石輸送路線として建設されたが、第二次世界大戦前から、地勢の険しい峡谷を通過するケアンズ〜キュランダ間33キロに観光列車が運行されていたという。キュランダの先にも約400キロの路線が続いており、ケアンズからキュランダも経由して週1回、「サバンナランダー」という片道1泊2日の観光列車が終着駅のフォーサイスまで運行されている。

バロンフォールズ駅に停車

キュランダから5分ほど森の中を走ったところで、急に車窓左手の視界が開かれて駅のホームが出現し、15時34分、バロンフォールズ駅に到着。ホームの真下へと続く渓谷と対岸の岩壁を流れ落ちる滝の展望台として設けられた無人駅である。上空には先ほど乗ったスカイレールのゴンドラが等間隔で往来している。列車はここで約10分間停車することになっていて、乗客が一斉にホームに降りていく。