特別連載 平成版・南蛮阿房列車 「鉄道の世界遺産」をめぐる旅 第3回 「家族で楽しむキュランダ高原鉄道」(オーストラリア)

小牟田 哲彦
ケアンズ市内では、放し飼いになっているワラビーを見物することもできる

そして、その日帰り圏内に、これまた世界遺産に指定されている熱帯雨林を走り抜けるキュランダ高原鉄道がある。テレビ朝日系列で放送されている『世界の車窓から』では、かつて10年間にわたってこの鉄道をオープニング画像に用いていたという。2010年(平成20年)9月、1歳の娘を連れての家族旅行でも何とか汽車ポッポに乗る機会を探っていた私は、いかにケアンズが小さな子供を連れての海外旅行先として優れているかを妻に繰り返し力説して、家族3人での夏の旅行先にケアンズを選定し、旅行のスケジュールにこのキュランダ高原鉄道の乗車スケジュールを組み込むことに成功した。

機中で1泊して早朝にケアンズへ着いた私は、疲労回復のため初日はホテルでのんびり過ごす妻子を残して、1人で早速ケアンズ駅まで歩いていった。ケアンズ駅は大陸の東海岸を南下してブリスベン方面へ向かう長距離列車の起終点なのだが、巨大なショッピングセンターの駐車場の片隅を間借りしているような小さな駅であった。ホーム横だけでなく真上も立体駐車場なので、昼間でも長大なホーム全体が薄暗い。1番線と2番線のプラットホームが向かい合っているだけなので、オーストラリア北部のターミナル駅という雰囲気も感じられない。 

キュランダ高原鉄道の列車

2番線に、9時30分発のキュランダ行き観光列車が停車している。ディーゼル機関車2機が13両もの客車を牽引する長大編成だ。もっとも乗客の姿は少なく、大量の空席を抱えたまま、定時から少し遅れて出発していった。

ともと、ケアンズ発の下り列車は団体ツアー客の利用が少ないと言われている。キュランダ高原鉄道の体験乗車が組み込まれたケアンズ発着の日帰りツアーは、キュランダからの復路に乗車するスケジュールになっていることが多い。しかも、郊外にある隣駅で乗降するツアーが多く、それらに参加するとこのケアンズ駅を利用しないことになるのだ。

この列車に乗るのがケアンズ旅行の最大の目的である私にとっては、そのたった1駅分の未乗車区間の存在は許容できない。とはいえ、子連れの家族旅行の建前上、個人旅行スタイルで列車に乗って往復するだけというわけにもいかない。結局、日本の旅行会社ではその一区間を端折らないツアーを見つけることができず、「帰りの列車は終点のケアンズ駅までちゃんと乗ります!」を謳い文句にしていた当地の旅行会社のツアーに参加することにした。ツアーと言っても、キュランダ到着後はケアンズ駅に列車で戻ってくるまで自由に行動できるプランである。