地方で必要なのはセレクトショップなどの「差別化」ではなく、地域の人に選ばれる存在であること

川上徹也・著 『物を売るバカ』刊行記念対談@盛岡「フキデチョウ文庫」

沼田 それって充分にセレクトショップの機能を果たしているということだと思うんですよ。実際、私も目的の本があってさわや書店さんに行っても、本当に、ほぼ、ないんです(笑)。「ありますか?」って聞くと「ありません」とか、「釜石店に1冊ありますけど」って。他店でがんがん積んで売っている本でも、問い合わせると「ありません」で終わりです。

川上 でも、つい買ってしまう本がある。それは確かにセレクトショップそのものですね。ベストセラーとか話題の本は、あえて仕入れないんですか?

栗澤 いえいえ、誤解です(笑)。こちらも商売なので、売れているものはきちんと仕掛けますし、「ベストセラーなんて仕入れるものか」と思っているわけではないんですよ。ただ、担当者が自由に仕入れている部分が大きいので、「あの作家は好きじゃない」とか「世間で売れている理由がわからない」というような本だと、それ以上仕掛けない、というのはありますよね。

川上 担当者に委ねているんですね。

栗澤 はい。彼ら彼女らが言われてカチンとくるのは、「あの大型書店には積んであったよ。どうして置いてないわけ?」という言葉(笑)。こっちは選んでいるんだ、って。

川上 僕はそういう、お店によってラインナップが違うというのは素晴らしいことだと思うんです。というのも、「売れた」と「売った」は違うものだから。駅ナカで人通りの多い場所にあるお店が「何百冊売りました」と言っていても、立地と本の実力で売れたのか、それとも意志を持って売ったのかはわからないわけです。たとえば、自分のお店が全国の書店の1%のシェアを持っているとしたら、10万部売れた本を1000冊売ってもそれは「売れた」です。決して「売った」わけではない。そういう視点で見ると、さわや書店さんは全国シェアに比べてものすごい冊数を売っている本が、たくさんある。それは「売る」という意志があるからできることです。そういうお店には惹かれますよね。

沼田 なるほど。

栗澤 景気のよかったころは、9時にオープンして21時にクローズする、そのルーチンで充分に売れていたんです。それこそ、売らなくても、売れましたから。

川上 出版業界の売上高は、90年代前半がピークですからね。

栗澤 今でも覚えている出来事があるんです。書店業界に入って間もない雨の日、当時の上司が「今日はもうダメだな」と最初から諦めていて。僕は、「雨なりに何かできることはないか」と考えたかった。今はもうそんなこと言っていられないですし、売るという意志を持たなければ生き残れないのですが。

川上 しあわせ計画舎さんだって、ブログがなくても、HPがなくても、充分に「意志表示」ができている。それは会社名もそうだし、外から見たときの雰囲気も、中の空気感もそうです。結局、「差別化」なんて言葉はたいした問題じゃないんですよね。

ところで、さわや書店さんはフェザン店のような「売ろう」という店ばかりではないと聞いていますが・・・・・・。

栗澤 そうですね。こちらとしても悩ましいところなのですが。

川上 いろいろ試したりされたんですか?

栗澤 私どもの支店は、スーパーの中のインショップとしての小規模店や、ショッピングモールの中に入っている中規模店などバラエティ豊かです。その分、当たり前ですが、客層や売上げなどもそれぞれ変わってきますので、チェーン店として統一した販売方法が取れないのが、悩みの種です。フェザン店の方法を他店で真似して、成功しました、とはなかなか行かないですね。

川上 あるチェーン店で、一軒の店がセレクトショップとして大成功したので、他の店でも同じ棚を作ったら、大失敗したというケースを聞いたことがあります。みんな「いい店ですね」とは言ってはくれるけど、売上が急落してしまったという。

栗澤 へえ。